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そんなに酒には弱くなかったはずだが、飲み慣れないお酒を飲んだからか大分顔が赤くなってしまっているのを窓ガラスに映る自身で確認した。
バルコニーへと辿り着き、少し肌寒い夜風に当たっているとようやく頭が冷えてくる。
そろそろ戻るか、と足をホールに向けると、誰かに肩を掴まれた。
「君見ない顔だね〜ここのパーティーは始めて?」
「俺達がいろいろ教えてあげるからさ、一緒にあっちで飲もうよ」
男2人、軽薄な態度、服を着ていると言うより着られていると表現するのが正しいであろうお高いスーツ。
(なるほど、パーティーに来た女性を狙うボンボンのナンパか)
見たところ私とそんなに年も変わらないように見えるが、大分小慣れたその手口を見ると常習犯なのだろう...少し厄介なことになったと顔をしかめる。
「向こうにツレがいるので結構です」
「そう言うなって、とりあえずちょっと向こうに行こっか」
「ッちょっと!」
一瞬の隙をついて男の1人がするりと肩に手を回し、もう1人が背後に立ち背中を押してくる。
吐き気のするその手を今すぐ掴んで投げ飛ばしたい衝動に駆られるが、こんな人目につきやすいところで目立つわけにはいかない。
一体どうすれば、と男達に抵抗しながら考えていると、突然背後の男がうわっと間抜けな声を出して倒れた。
突然のことに私の肩に回されていた手も離れ、その瞬間男とは比べ物にならないほど強い力に引き寄せられた。
「この女は僕のものだ。貴様等如き下賤の者が触るな」
頭上から怒りを押さえ込んだような芥川の声が聞こえる。ただでさえ周りを威圧するような声の彼がここまで露骨に怒気を醸し出すのはいつぶりだろうか。
鋭い眼光と猛獣の唸り声のような芥川の言葉を直に向けられたのがただの一般人となれば、当然歯向かうことなんてできやしない。
先程までの強引な態度は何処へやら、男達はすんませんでした!と情けなく叫ぶとあっという間に逃げて行ってしまった。
抱き寄せられた体制のまま沈黙が訪れる。あまりの気まずさにそっと芥川の顔を見上げれば、彼も私を見ていたのかバッチリ目が合ってしまった。
「あー...あの、助けてくれてありがとう」
「......早く行くぞ、任務はまだ終わっていない」
「そうだね」
ぶっきらぼうな態度とは裏腹に、私の腰に回された手は歩き始めても尚離れることはない。
そんな彼の独占欲に触れて早々に機嫌を直してしまう私は、やっぱり単純なんだろう
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作者名:朔麻 | 作成日時:2019年5月26日 23時