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「そう落ち込むなって、辛気臭ぇな」
そう声をかけて中也さんが差し出したカクテルを受け取り、悶々とした気持ちごと飲み干すように一気に煽る。
中々に度数の高いものだったのか、僅かに頭がぼうっと霧がかかったようになる。
「中也さんはこういう服もよくお似合いですね、素敵です」
「そりゃどうも...って、別にお前も似合ってないわけじゃないだろ」
「だって、」
芥川は、と拗ねた口調で言うと心底呆れた顔を向けられた。何故だ。
「彼奴が素直じゃねえのは今に始まったことじゃねーだろうが」
「そりゃそうですけど...仮にも恋仲ってやつなんですし、お世辞でも良いから一言くらい欲しかったです」
「面倒臭えなァてめえら」
「...自覚済です...素直になれないのは芥川も私もお互い様ですし、さっさと諦めて任務に集中します」
中也さんにもらったカクテルが今頃になって回り始めたのか、なんだか頭と体がすっきりしない。
早めに酔いを覚まさなければと中也さんにご迷惑おかけしてすみません、ありがとうございましたと頭を下げ、その場を立ち去る。
コツコツと慣れないヒールを響かせながら、バルコニーへと向かう間も考えるのは彼の事。
(綺麗とか、似合ってるとか、そんな甘い言葉じゃなくても良いから。
...ただ、自分の想いが一方通行ではないと証明できるような言葉が欲しかったな)
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作者名：朔麻 | 作成日時：2019年5月26日 23時
