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午前中の入隊希望者の審査が終わり真選組は各自、江戸の見回りに出ていた。
幸か不幸かその日の歌舞伎町の見回り担当は、死んだ魚のような目をした男、坂田と瞳孔が開きっぱなしの男、土方だった。
サボり常習犯の坂田は相も変わらず甘味処で甘味を食べるための口実を探し、真面目な土方は怪しい動きをしている者がいないか辺りを見ていた。
目立ったことは何も無く今日も平和に過ごせるかな、と土方が考えていた時である。
「おじさん!おじさん!助けて!!悪い人達が!どうしよ、悪い人達が追いかけてくる!」
「どうした、何があった?」
すごい勢いで小さな男の子がこちらに走ってきた。
「あのね、さっきね、僕ね、近道だからって路地裏の暗い道を通っちゃったの。そしたらね、怖いおじさん達が戦っててね、僕びっくりしちゃって物音出しちゃったんだ!そしたら僕のこと追いかけてきたから逃げてきたの!」
男の子は息を切らしながら必死にさっきあった出来事を土方に伝える。
「そうか、教えてくれてありがとな。
怖いおじさん…攘夷浪士か?
坂田、今からザキに電話するから子供の相手しててくれ。」
「んぁ? おう。」
ピッ
「山崎か?俺だ、子供が攘夷浪士に襲われたらしい。俺達はこれから現場に向かうから、今から言う場所で子供の保護を頼みたい。あとは〜………」
電話をしている土方を横目に坂田は男の子へと近ずく。
「ボウズ頑張ったなぁ?泣かないなんて偉いぞ。それでこそ男だ。」
「えへへ…でしょ!
一緒にいたお姉ちゃんもそう言ってくれたんだよ!
……お姉ちゃん大丈夫かな…」
「…お姉ちゃん?
おい、そのお姉ちゃんはどうしたんだ。」
「僕がね怖いおじさん達に襲われた時に助けてくれたんだ。でも!…でもその時にお腹撃たれちゃって怪我しちゃった…
どうしよ…お姉ちゃん大丈夫かな…?!」
「!!! もしかして…
そいつ髪の毛は?!どんな髪型だった?!!」
「ショートカットだったよ。」
「まじかよあいつ…!!!
ボウズあの兄ちゃんと一緒にいろよ。」
そう言って坂田は走っていく。
「…〜ああ、頼む。」
ピッ
「これからザキ達が来るそうだ…っておい!坂田!!どこ行くんだ!」
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作者名:時咲 | 作成日時:2021年4月24日 17時