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せっかくセットしたふわふわの髪が崩れないようになるべく早く歩く。
駅の改札が見えてきて、
柱に寄りかかる凄くカッコいい章大先輩を見つけた。
｢章大先輩！｣
｢あ、おはよぉ、A｣
朝でもふわふわにこにこした章大先輩が眩しい。
｢ふふ、ほんまにかわええ｣
そう言ってわたしの手を取って繋ぐ章大先輩。
...アナタの方が断然お洒落ですよ、なんて。
言っても ありがとぉ、 って流されるだけだろうけど。
｢そんなこと...｣
｢...俺、不安になってまうわぁ｣
なんでですか〜？なんておどけた返事は、声にならなかった。
お互い同じ温度で重なる唇が熱い。
まるで、そこにだけ体温が集中してるみたい。
章大先輩とキスしてる、
なんて気がついたのは唇が離された瞬間。
伏せられた睫毛が長くて、少し嫉妬する。
そんな場違いなことを考えたわたしを知ってか知らずか、
章大先輩は怒ったような顔をした。
｢...なんでこんなとこでキスしたと思う？｣
って言って、わたしの手を引いて駅のホームに向かう。
改札を通っても本当にわからなくて、
章大先輩が怒ったのかと思って、
思わず章大先輩を引き止める。
｢章大先輩っ！｣
振り向いて私の顔を見た章大先輩が
何故か今度は泣きそうな顔になる。
どうして。泣きたいのはわたしの方なのに。
｢ほんまに、ごめん、そんな泣きそうな顔せんといて...｣
悲しそうな声でそう言って、わたしを抱きしめる。
｢俺、ほんまに不安やねんて、｣
｢A、どんどん可愛くなるから...ほんまにあかんの｣
｢ほんまは、外になんか出ないで
俺が閉じ込めときたいくらいやねん｣
さっきはごめんな、って
わたしを抱きしめる腕を解きながら呟いた。
その腕を掴んで、がっちり目を合わせて。
伝えたいことだけを。
｢わたしには、章大先輩しかいないから...全然大丈夫ですよ、｣
章大先輩が眼をむく。
...重いって思われたかな。引かれたかな。
こんなとこ、章大先輩にだけは見せたくなかったのに。
そんなブルーな心は。
｢...俺も｣
って囁かれた言葉と同時に降ってきた甘いキスで吹き飛んだ。
｢俺にも、Aしかおらんよ｣
Fin.
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作者名：琳兎 | 作成日時：2017年1月7日 4時
