短 篇 詰 め 。【∞】

・・ ページ9

Aside




｢さっきからさ、あたしの話聞いてないでしょ｣


｢なぁ、そこのドーナツ屋、来週オープンなんやって！｣



...ほら、聞いてない。



ふたりで行きたいって、思ったのに。




そう思っていると、隣に座る恋人が呟く。


｢...連れてってやろうと思ったんになぁ...｣


耳を疑った。


いつも、そんなこと言ってくれないから。



｢ね、忠義、いまの、もう一回言って...？｣


聞かれているとは思わなかったのか、

忠義の肩がビクっとする。


｢...聞いとったん？｣


｢...ダメだった...？｣


｢...や、ええけど...｣


途端に忠義の顔が、赤くなってって。


｢...一緒に、来よか、ここのドーナツ屋｣



顔が、熱い。


忠義のが、伝染ったみたい。



ゆらゆら。


あたしの気持ちが揺らされる。


忠義は、こんなことで

あたしのココロを揺らしてしまうんだ。



とくん、と。

柄にもなく胸が高鳴った。


｢うん、来ようね、ぜったい｣




素直になれないあたしでもいい。


それでもきっと忠義は許してくれると思うから。


たまに、こうやってキモチを確認し合って。


たまに、どきどきし合う。


それが、あたしたちなりの恋のカタチに思えて仕方ない。


ゆらゆら、ゆらゆら。


あたしたちの、ふたりの恋は、

一緒に、宙に舞っていったらいい。


そう思えた。






｢...すきやで、A｣


｢...あたしも、すきよ、忠義｣





Fin.

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