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上を向くと、傘を私にさす村上さんがいた。
「...なにしてんですか、濡れちゃいますよ」
現に、村上さんの片方の肩と背中は少し濡れ始めてる。
「何してんはお前の方じゃ」
「...人の話聞いてましたか」
「風邪引くで」
「...」
人の話を聞けください。
けど、
さりげなく傘をさしてくれてるとことか、
自分のカバンからハンカチ出してくれてるとことか、
紳士だなぁって思う。
「...何があったんかは聞かんといたるけど。
あんま自分を追い詰めたらあかんで、」
...その声があまりに優しくて。
せっかく村上さんが拭いてくれたのに
また涙が出そうになる。
というか、出る。
「...ちょ、なんで泣くん」
「...村上さんのせいですよ、」
何を言うてるんやこいつは、
みたいな顔の村上さんをよそに
びしょびしょの袖でまた溢れてきた涙を拭う。
けど、もう涙は止まることを忘れたみたいで。
あれ、なんで私村上さん来た途端に泣いてんのよ...
「なんや、俺が来て安心したん?」
ニヤニヤしながら村上さんが聞いてきた。
とりあえずイラつくから肩に一発パンチを食らわす。
「ちょ、お前、せっかく人が傘さしたってるんに...」
なにすんねんと続くはずの村上さんの言葉は、
続かなかった。
私が、村上さんに正面から抱きついたから。
「...少しだけでいいから、
...こうさせてください」
私は、安心したかっただけなのかもしれない。
誰かの優しさに触れて、気持ちを落ち着かたかっただけ。
だから、村上さんが恋しかったなんて
絶対絶対気のせいであって。
黙って私を抱きつかせてくれた村上さんに
小さくお礼をして、止まらない涙を
村上さんのシャツに押し付けた。
Fin.
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そるとさうんど(プロフ) - すごく面白かったです!更新楽しみにしてます。 (2016年1月21日 19時) (レス) id: 18cc1db912 (このIDを非表示/違反報告)
淋兎(プロフ) - ∞キュウソまぐまぐ∞さん» コメントありがとうございます!わわわ、嬉しいです...!キュウソネコカミさんの曲はまだ聴いたことがないのですが、今度聴いてみたいと思います! (2015年10月13日 23時) (レス) id: c6cb689a5e (このIDを非表示/違反報告)
∞キュウソまぐまぐ∞ - 私もエイトとKANA-BOONとキュウソがすきです! (2015年10月13日 23時) (レス) id: 0fe8342ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琳兎 | 作成日時:2015年9月9日 18時