短 篇 詰 め 。【∞】

転校生 feat:Subaru-S ページ2

それはもう、ずっと前のこと。


ずっと前のことなのに、

俺の記憶にこびりついて離れないこと。


俺の家の隣に引っ越してきた、

俺の学校への転校生がいた。


彼女は名前をAと言った。


なんだかんだで仲は良かった。


当時かなりグレとった俺は、

学校をサボって家に引きこもっとって。


音楽だけは好きやったから、

ひたすら歌って、歌詞書いて、

曲作って、歌って、ってしとった。


オカンの言うことなんて聞かんとそればっか。


でもAはそないな俺を軽蔑せんかってん。


「 いいと思う、そういうの。あたしは、好き 」

って。


Aも学校はサボりがちやったようで。


その日から俺はAの部屋に入り浸っとった。


Aの部屋には窓伝いで入った。


Aの部屋の窓から屋根に登って、初めて煙草を吸った。


少し苦くて、でもクセになる...Aみたいやって思った。


しばらくして、久々に学校に行って。


やっぱり俺を理解しようとしてくれる奴は

おらんくて、色んなものにイラついて。


気分転換でもしようと思って

近場のレンタルショップでビデオを借りてんけど、

どうにも観る気が沸かなくて、

家に着いたら即リビングの机に置いた。


その直後、Aの部屋から 俺の耳に響いたピアノの音。


それは、今でも忘れられない音。


Aの部屋に行くと、

それはもう自由にのびのび鍵盤を弾いとって。


たぶん、俺が初めて人に“好き”って

感情を持った瞬間やった。

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