□私を攫った王子様＃2 ページ2
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学校のほとんどの女子生徒が、先輩を近くで見ようと前に出ているため人口密度がすごい。ほぅ、あれが俗に言う「人がゴミのようだ」ってやつか(違う)
『あの人たちと一緒に前で見たら？』
「いや、それはいいかな」
『ふーん、変なの』
「あんたに言われたくないね」
親友によると、あのメス豚共と一緒になって騒ぎたくないかららしい。かなりの辛口で思わず笑ってしまう。
好きじゃないのかと聞けば、アイドルと同じで遠くから眺めているくらいがいいようだ。なるほど、ファン目線ってことか。まぁ、分からなくもない。
「………もしかして」
『ん？どうかした？』
「おまえ一回立て」
『やだ、面倒くさい』
「いいから！」
腕を引っ張られて、無理やり立たされる。身長が高めだから、目の前に群がる女子生徒がいても少しはグラウンドが見渡せる。
その時、京本先輩っぽい人と目が合った気がした。
気がしただけで、多分気のせいだ。距離あるし、私の勘違いだろう。そんなことを考えていたら、親友は立たせた理由を特に言わずまた先輩の話を始めた。
「なんか意外だわ」
『なにが？』
「だって京本先輩、運動苦手だから」
『へぇ、そうなんだ』
走る競技である借り物競争に出ているのが不思議だと親友は言った。特に借り物競争って、走ることがわりと重要な競技である。
でも体育祭で走らない競技なんてほとんどないだろう。
「まぁそこがかわいいんだけど」
『んー、理解不能』
「は？」
あのかわいさは保護案件だろ、と私に詰め寄る。なんだよ保護って、先輩は絶滅危惧種の動物なのか？
んー、ますます分からない。
「これだから脳筋は」
『それ関係ある？！』
てか脳筋じゃないし！と言い返した瞬間、バンッというピストルと共にまた先程と同じような歓声が沸き起こる。
いつの間にか始まっていたようだ。私はリレーに向けて休みたいから、借り物競争は見ずにまた座る。
隣の親友は立ったまま、両手を合わせてブツブツと何かを呟いている。うわ、見ないでおこう。
『はぁ………パン食べたい』
「ほとんど差はなく、全員がカードを拾ったァ！」というアナウンスを聞きながら、数分前に食べたパンのことを思い出した。
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作者名：ティー
| 作成日時：2022年6月10日 1時
