キイロとクロ8 ～final～ (ページ9)

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廉くんはそう言うと、私から離れてゆっくりと言葉を紡いだ

【最近、海人とA見てると、めちゃくちゃイライラする】

「えっ」

【まあ前から気には食わんかったけど、最近はもっと】

「…」

【Aと海人はさ、お互いがお互いのこと気遣ってばっかで、バカみたいに優しかったり

わかり合ってたり、そこんとこに本当イライラする】

「…」

【相手に幸せになって欲しいから、笑ってて欲しいから、そのために自分は身引いてばっかで】

「そんなことないよ」

【俺はぜってぇそんなことせん

海人に気遣って、Aの背中なんか押したりせんよ】

「廉くん…」

【Aの彼氏は、俺やし

ね】

「うん、そうだよ」

廉くんはそう言って少しだけ笑うと

俯きがちに重い口を開いた

【ってね、最初はね、そう思ってたんよ】

「え、どういう…」

【最初はそう思ってたけど

Aと海人見てると、どんどん揺らいじゃうんよ】

そう言うと廉くんは眉間にシワを寄せて

切なそうな顔をして私を見つめた

「何が…？」

【…俺、Aの彼氏だからわかる

いま、頭ん中におる人、誰なん？】

「えっ」

【、、、最近ずっと思ってた。

海人が風邪ひいた時も

夏にみんなで遊んだ時も

あぁ、いつかまたAは海人のこと好きになんじゃねえかって考えて

でも俺そんなお人好しやないし

目の前のAを信じたいけど

ただどっかでやっぱり繋がり続けてるお前ら見るん、なかなかつらいわ】

「ねえ、廉くん」

【Aのこと幸せにするのは俺だって、胸張って自信持って言いたいのに

今はそれができない。

それが、どーしようもなく、辛いんよ。】

廉くんのこんなに切なそうな顔を見るのは初めてで

ギュッと胸が締め付けられた

それと同時にこの顔をさせてしまった私を酷く恨んだ

「でもっ、私は廉くんが好きなんだよ」

【…やめろよ】

「信じて」

【だから！

それが辛いんやって…、そうやって自分に嘘ついてるA見るんが、ほんまに辛い

そうさせてんのもイラつく

頼むから、海人が好きだって、そう言えよ…っ】

廉くんはそう言うと、頭をガーっと掻き

【ごめん、今はAといれんわ】

と言ってスタスタと屋上を出て言った

私は頭の中が真っ白になって、ただ溢れる涙を止めることもできずに、去っていく彼を目の前に体は動かなかった