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あっという間に2週間が過ぎた
空っぽになった彼女の家から僕の家に移動してきた君
そして、明日、君は飛び立つ
前日の深夜0時
ベッドに向かい合い眠ろうとする僕ら
見つめ合い、鼻と鼻が少し触れ合うと、Aはくすぐったそうに笑う
「そんな切ない顔しないでよ笑」
『んー?してないよー?』
「嘘つき笑」
そりゃ切なくなるでしょ、明日から君がいないんだから
「ねぇ紫耀くん」
徐に口を開いた彼女
『なに?』
「...海、行きたいなぁ」
『海?』
「んふふふ」
『え、いま!?』
「うん」
『え、まじ?』
君のそんな突発的な言葉をきっかけに
車を走らせて、人ひとりいない深夜2時の海にやってきた僕ら
「くぅー!さいっこう〜」
風に吹かれながら振り返る君は、満面の笑みをした
『本当にきちゃったね笑』
「紫耀くんってドラえもんなんだね」
『ちゃーんと車で来たでしょうが笑』
「ありがとうね、わがまま聞いてくれて笑
ほらこっち、座ろうよ」
Aは砂浜に腰をかけ、隣をポンポンと叩く
そのまま座ると、君は僕の肩にそっと寄りかかる
「気持ちいいね」
『うん』
なんとも言えない空気が漂うこの海
『...やっぱ、寂しいかも』
会えない分だけ楽しみがある、なんて
そんなの嘘だって思うくらいに、今は目の前の君を離したくない
「大丈夫だよって言ったじゃん」
『...』
思わず君をゆっくり抱きしめると、僕の背中に手を回す
「...どうしよう、大丈夫じゃなくなったら」
少し震えた声で言うA
大丈夫、そんな言葉で言い聞かせていた僕ら
そうして固められたものが急にふわっと崩れたみたいに、彼女は涙を流した
『...会いたくなったら、行くよ』
「きっと紫耀くんは今よりもっと忙しくなって来れないよ」
Aはこの2週間が僕と過ごす最後の瞬間だって思ってたんだね
きっとお互いのためにはそれがいいのだろう
だけどどうしても
どうしても僕にはこれが最後とは思えないんだ
大丈夫、またすぐ笑って過ごせるよ
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作者名:しろくま | 作成日時:2021年2月26日 1時