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父親との再会から1ヶ月、社長から会わせたいと言われた相手はAにとっての叔母にあたる、父親の妹だった。
父親は家族と絶縁状態だったため、彼女も初めて存在を知ったという。
そこで判明したのは、Aが来日して間もなく姿をくらましたと思っていた父親は、交通事故に巻き込まれて重体になっていたためだったこと。
叔母は父親の事故をきっかけに普通の生活ができるまでの面倒を見たと言う。それから数年経った今、がんが発症し、叔母はそのまま父親の面倒を見てくれていた。
「お父さん、いずれ私の負い目になる存在だから姿を見せなかったみたい。そんなのただの逃げでしかないって思った。
なのに、叔母さんの家に行ったら、私のグッズとか、番組とか、たくさん残ってたの
叔母さんに、毎回チェックして応援してたんだよ、って言われた。
こんなにずるくて最低な父親いないって思った
だけど、それでも私の父親なんだ
私をどこかで大切にしてくれてた人なんだって。
ずっと、必要とされてないって思ってたから素直に嬉しかった。
歪んでるよね、だけど
どうしても、私にとっては大切な存在だった
暴力振るわれてたのに、子どもから逃げた最低な人なのに」
世の中には、どんなに憎いと思っていても、どうしても切れない縁がある
どこかで愛おしいと思ってしまう存在もいる
彼女の話を聞いて、僕はそのやりきれない想いに一筋の涙が流れた
「それから、毎日顔を見に行くようになった。話せないのに、あの空間にいると何故か安心しちゃって。
そうやって過ごしてたら、ドラマの撮影とかが重なって、体調崩しちゃって。
突然、耳が聞こえなくなったことがあった」
『...え?』
予想外の彼女の言葉に、僕は思わず聞き返した
「突発性難聴っていうらしいんだけど、多分ストレスが原因でね。
今の今まで聞こえてたのに、急に聞こえなくなるの、時間もバラバラで、突然私だけ取り残されてるみたいな気分になって、音だって外すこともあった。
そしたら毎日ね、いつそうなるのか、怖くて怖くて、堪らなくなって...」
『....』
「...無理してるのわかってたけど、まさかこんなことになると思わなかった
...でも、今は休んでるし、ちょっとずつ体も良くなってきてると思うから大丈夫」
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作者名:しろくま | 作成日時:2021年2月26日 1時