74〜kaito's side ページ24
Aちゃんの様子に違和感を覚えたのは、この頃からだった
少し痩せた体、声をかけても少しの間応答がなかったり、とにかく疲れが溜まっている様子だった。
ある日は、ゲリラ豪雨に見舞われて撮影は中断し、Aちゃんは仮眠を取ると言って休憩室に1人籠っていて、心配になって様子を見に行った
海人「ごめんっ起こしちゃった...!」
「ううん、眠れなくて」
海人「なんか、体調悪そうだったから...大丈夫?」
「...うん、ありがとうね
こっち、座る?」
案内されるがまま、横に腰をかけ、彼女は不自然な沈黙を破いた
「前にも、こんなことあったんだ」
海人「そうなの?」
「うん、紫耀くんと私が共演した映画覚えてる?」
海人「うん!あれ面白かった〜」
「さすがぁ、なんかね、撮影中にね、私昔から雷が苦手で、過呼吸になっちゃって」
海人「え、うん」
「紫耀くんがそのまま医務室まで運んでくれたらしくて、起きたら紫耀くんがいて、手、握ってくれて」
海人「...」
そのまま自分の手を優しい眼差しで見つめる彼女
「いつも、私が怖がらないように手握ってくれてたんだ」
その声は、微かに震えだしていた
「...紫耀くん、元気だって言ったよね」
海人「....うん」
「海人くん」
海人「うん」
「紫耀くんには言わないで欲しいんだけど、
私は、全然、元気じゃなかったんだ」
海人「Aちゃん...」
そうして、自分の手を握り締めながら、また力なく笑った
その瞬間、彼女の瞳から一粒の涙が流れた
「...っ...」
海人「Aちゃんっ...」
「ごめん、海人くん」
海人「ううん、ここ俺しかいないから、大丈夫だよ」
僕の言葉を皮切りに、彼女の綺麗な瞳から大粒の涙が溢れた
「自分から切り出したくせにね、やっぱり....っ
やっぱり、私は、紫耀くんがいい...っ
紫耀くんに会いたい...っ会いたいよ....っ」
子どものように、我慢していたものが溢れ出したようにして泣き喚く彼女
紫耀の名前をひたすら呼ぶ彼女
僕はそんな彼女を目の前にして、何も声を掛けてあげることはできなかった
僕はただ、彼女の背中をさすってあげることしか、できなかった
紫耀だって、君がいいって思ってるよ。
そんなこと、言えるわけなかった
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作者名:しろくま | 作成日時:2021年2月26日 1時