キイロとクロ (ページ32)

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家に帰ってからも、ずっとあの人に触られた感覚が取れなくて

寝たくても眠りにつけなくて

ただ呆然と部屋の机に座ってた

そこに、海人が枕を抱えてやって来た

『Aちゃん一緒寝よ～～～～』

体育倉庫で見せた怒りの表情でもなく

公園で見せた男らしい表情でもなく

海人はいつも通りのフニャッとした微笑みで部屋に入って来た

「えっ？」

『ほら、早く早く』

そう言い海人は私の布団に入り、隣のスペースをポンポンと叩く

「いやいや、どんな冗談よ」

幼馴染とはいえ、流石に16歳の男女で同じ布団に寝るとかは考えられなくて

そもそも海人と寝るのなんか幼稚園以来だし

『え、寝ないの？めっちゃ眠いんだけど』

ぽかんとした表情で私を見つめてくる

「おかしいじゃん、こんなことしたことないでしょ」

そう言いながら海人を追い出そうと布団に向かう

バッ

「えっ」

海人に腕を引かれて、私はそのまま海人の腕の中にすっぽり収まった

『よしよし、今日は一緒に寝ようねえ』

私の頭の上で海人はそう呟きながら、抱きしめ、頭を撫でる

ここまで近くに海人がいたことってなくて、心臓が破裂しそうなくらいだった

「ちょ…」

抵抗を試みるも、細い体からは想像つかないくらいの力でがっしりと抱きしめられている

『…暴れないでええ疲れる～

眠れないんでしょ、一緒に寝ようよ』

少し低い声でそう呟いた

「…」

私が今日のことで眠れないのもこの人は見抜いてるんだね

海人の優しさなんだね

「…怖かった」

『うん、そうだよね、ごめんね』

「海人のせいじゃないけど、男の人って、もうなんか無理、怖い」

『俺も男の子だけどね』

「そうなの？」

『ふはっ、なんだと思ってんの笑』

「んー、なんか、海人は違う」

『…そっかあ』

そんな会話をしながら、

私は海人の匂いに包まれて

いつの間にか深い眠りについた

海人には好きな人がいて

こんなことおかしいし

ただの幼馴染じゃないってわかってるけど

これが私たちなんだ