近すぎて遠くて。(hk×in) (ページ16)

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hk side

…って言っても、バンドのリハとか調整とか、出番のことを考えたらそこまで時間はないみたい。

「どこ行きたい？とりあえず適当に回ろっか」

「うん、あ、お化け屋敷あるよ、裕翔と圭人のクラスじゃない？」

「えー？いのちゃん別に怖くないでしょ？」

「いいじゃん入ろうよ」

いのちゃんも俺も、お化けとか幽霊とかそんなのは全然怖くないんだけど、そういうテンションの上がる場所は好きだ。

「ほら、行こ」

手を引くのは躊躇ったのか、いのちゃんは俺のシャツの袖を引っ張る。

あざとい女子か…！

いのちゃんの怖いところは、これが素で天然でやってるのか、全部計算でやってるのかわからないところだ。

いのちゃんについてお化け屋敷に入ったけど、やっぱり高校の文化祭のお化け屋敷なんてたかが知れている。

きっとこれで本気で驚けるのは髙木くらいだろう。

「うわ、つっめた！」
「見てひかる、これすごくね？よく出来てる」

ちょっとオーバーなくらいにリアクションしてたいのちゃんだけど、急に俺の肩をトントンと叩いて顔を近づけて来た。

耳にいのちゃんの息がかかる、なんだ急に、これ俺が横向いたらキス出来るかも、もしかしてこのタイミングでほっぺに…？

「そこに隠れてるの圭人だよ、こっちから驚かそうよ」

こんな教室の真ん中で、でもお化け屋敷だからなかなか照明は暗いしキスしても、と下心だらけの気持ちでいた俺。

「…へ？」

「そんな大きい声出したらバレちゃうじゃん！」

「あ、ごめん…」

そうだよな、いのちゃんがまさかこんな場所でそんな事するわけ…
もしいのちゃんに心が読まれてたら蹴られるところだった。

いのちゃんが指差した方を見ると、確かに圭人らしき生徒が隠れながらこっちを伺っていて。
こっちが気付いてることには気付いてないみたい。

「どうやって驚かすの？」

「うーん…狭いから背後に回るのも無理そうだしここの教室のものは勝手に使えないからなぁ…やっぱシンプルにわ！って」

「そんなんでいいの？笑」

「だってそんなの咄嗟に思いつかねーし…」

いのちゃんはちょっと拗ねながらそう言った。

「じゃあ、圭人が出てくるタイミングで一緒にね」

怖いね、って言いながら2人で顔を見合わせて笑う。くだらないな、って思うけどそういう時間が楽しくて。

やっぱりわ！って言ったくらいじゃ圭人もそんなに驚かなくてきょとんとしてたけど、俺といのちゃんは一頻り2人で笑った。