銀色の災いは炎の人に恋をする (ページ10)

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君の声ページ10

あの子が心配で、戦場に飛び出した。

そこまでは覚えている。
けど。そのあとがよくわからない。

血の匂いを嗅いだ、瞳が疼いた。
そのあとはぐちゃぐちゃで気づいたら暗闇を彷徨っている。

不安で怖くて仕方ないけど、何が起きたのかはわかる。あの日と同じだから。

私はきっと災いをもたらしたのだろう。
出口に出たら、あの海軍もお父様も兄様たちもあの子も…きっと、紅に塗れているに違いない…

座り込んで泣きたくなった。
出口なんか見つけなくていい…
自分が起こした災いを結末なんか見たくない。

それならずっと闇を彷徨って本当の怪物になって仕舞えばいいのだ。
そう思った矢先明るい光が、カァッと照らした。

「A！」

あの子の…エースの声だ。
彼の声は私を呑み込んでワタシを私に戻そうとする。

『エース…助けて…！』

さっきまで自分が起こした災いの結末なんか見るくらいなら闇を彷徨っている方が良いと思っていたのに。気づいたら私は彼に助けてほしいと…光のところへ連れてってほしいと願って手を伸ばしていた。

ー…

「A!」
『ひゃあ⁉』

目を覚まして一番最初に飛び込んできたのはエースだった。
私は驚いてベッドの上で身を引いた

「よかった、目を覚まして…あ、これステファンに噛まれたんだけどよ、もう大丈夫だからな」

そう言って笑うするエースの肩には痛々しすぎる手当ての跡があった。
…嘘つき。お父様の犬、ステファンがそんなことするはずない。

『ごめんなさい、エース…』
「？なんで」
『私のせいで…私が、兄様たちの言うこと聞かなかったせいで…災いが…「何言ってんだ」え…』
「誰も倒れてない。俺がちょっと噛まれたくらいだ…それに」

目を丸くしている私をエースが見つめる

「狼になったA、凄え強くて…かっこよかった」

1分もしないうちに彼の顔が滲んだ。
醜い災いである私を…カッコいいと言ってくれた人はかつて、誰もいなかったのに…自国の民さえ私を忌み嫌ったというのに…

止めどなく涙を流しながら私は遠い、遠い昔の、まだ王女だった頃を思い出していた。