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「でも本当に良かったです。
お嬢様の目が覚めて」
騒動がひと段落して再び戻ってきた静寂。
静かな水面にそっと石を並べるように、
神ちゃんの口から言葉が絞り出される。
「お嬢様が目ぇ覚まさへんかったら、俺はどうすればええんやろう。
手当てして貰うてる間、ずっと考えてた。
俺だけ生き残ってしもうて、流星にもシゲにも顔向けできひん。
……淳太様にも約束したのに」
神ちゃんはぐっと唇を噛み締める。
命の恩人である淳太を裏切ってまでこちら側に来たことを、
彼はずっと後悔していたのだろうか。
肩を震わせる彼の姿を見て、誰も言葉を返すことができなかった。
それでも彼の最後の一言に、流星は引っかかりを感じた。
「約束ってなんなん?」
流星の言葉に、びくっとしたように顔を上げる神ちゃん。
その視線はしばらく宙をさまよってから流星に注がれる。
「あんな……ずっと黙っててんけど」
言いにくそうに顔をしかめる神ちゃん。
ギュッと唇を結んだ彼の口から吐き出されたのは想定外の言葉だった。
「俺、優馬の店出てからも、淳太様とは連絡とっててん」
流星は言葉を失った。
一番助けてくれて、一番信頼していた神ちゃんが、
相手と内通してた?
静かなざわめきが心に広がるのが、自分でも感じ取れた。
「なんや、お前スパイやったん?
一番協力的なフリしといて。
思い通りに動く俺らのこと、内心バカにしてたんやろっ」
頭に血が上った望が、ガッと神ちゃんの胸ぐらを掴む。
慌てて紫耀が止めに入り、二人を引き剥がした。
「ちょっと、やめてください。
この人、怪我人ですよぅ」
「うっさい、部外者は黙っとけ。
なぁ、どうなん?どんな気持ちやった?
俺たちがあたふたと逃げ惑うの、面白おかしく……」
「ちゃう、そんなつもりやないっ」
神ちゃんが珍しく大きな声を出した。
屋敷の中でも外でも、常に冷静だった神ちゃん。
そんな彼の取り乱した姿に、流星は黒い気配を感じ取った。
「神ちゃん、」
そう呼びかけながらAから手を離すと、
神ちゃんの横にしゃがみ込む。
「説明してくれるか?」
この時の流星は、いつになく冷静だった。
神ちゃんの出方次第では、ここに留まってはいられない。
ちらっと流星を見上げると、神ちゃんはぽつりと話し始めた。
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moca(プロフ) - 優希さん» 優希さん、ありがとうございます!読みにくい部分もたくさんあるかと思いますが、お褒めの言葉をいただけると、すごく励みになります( ´∀`) 次章は2月末ごろに始められたらなぁと考えているので、楽しみにしていてください! (2017年2月16日 0時) (レス) id: 869b606eb4 (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 愛罠シリーズ1から読ませて頂いてます!わくわくするような展開がとても面白くて大好きです!また、曲のタイトル曲の世界観がスーッと盛り込まれていて本当に素敵だなと思っています!最終章に向ってしまうのは寂しいですが続編待っています!頑張ってください! (2017年2月15日 9時) (レス) id: efdae36fb0 (このIDを非表示/違反報告)
moca(プロフ) - ぴーちさん» ぴーちさん、そう言ってもらえるとすごく幸せです、ありがとうございます!続編はあの曲です。予想しながら待っててください! (2017年1月31日 16時) (レス) id: c5c064e0e4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーち - すごく文章が上手で、読みながらハラハラしちゃいます!続編も楽しみにしています! (2017年1月31日 15時) (レス) id: 6583968309 (このIDを非表示/違反報告)
moca(プロフ) - MilK.さん» MilKさん、お知らせできてなくてごめんなさい。一応前作のCriminalのあとがきで、シリーズしてきたので題名変えますとお知らせしています。内容はそのままなので、読み続けてもらえると嬉しいです! (2017年1月1日 21時) (レス) id: eb2695e115 (このIDを非表示/違反報告)
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