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No.86 ページ36
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阿「寒いから行こっか。」
Aの手をそっと握り歩きだした。
皆どこにいるの？なんて会話を交わしていると、車が通り過ぎる度に起こる風がAのフードの耳を揺らした。
阿「ねぇ、A。」
『なーに？』
阿「ちょっと変えようか。」
Aの握っていただけの手を少しだけ離しまだ細っこい指に自分の指を絡めしっかり握った。
阿「恋人繋ぎ。」
ね。と笑えばAの瞳も緩く弧を描いていく。
手の温度が混ざり合い、同じ温度になっていくことに胸が熱くなった。
阿「俺ね、この手を絶対離さないから……理想論だけどさ、年取ってお互いしわくちゃになってもずっと。こうやって手を繋いでいようね。」
また一台と通り過ぎる車の風がフードの耳を揺らす中、柔らかい笑みを浮かべたままのAがゆっくりと深く頷いた。
その姿がどうしようもなく愛おしく少し身を屈め触れるだけのキスをひとつ。
ねえA。
君がいると俺は強くなれて、いないともの凄く弱くなる。
その事に気づいたのは君が目の前からいなくなってから。
そんな馬鹿な俺だけど
どうかずっとそばにいて欲しい
誰よりも一番近い場所で
この手を握っていて欲しい
もう二度と離さないから
END
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作者名：ひな | 作成日時：2020年5月31日 3時
