伸ばした手を２ (ページ34)

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No.84 ページ34

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阿「は、え？」

もう寝るとメールがきていたはずだし、それにおやすみと返したはず。

携帯を取り出して確認しようとすれば、何故かやたら落ち着いている舘さんが「ピッタリだね。」と満足そうに笑った。

阿「ピッタリってなに、てか何でAが？おやすみって……えっ、」

宮「ほら、行くよ。」

呆気に取られている俺の腕を舘さんが掴み、自動ドアに歩みを進めドアが開けば冷たい風が吹き抜けた。

宮「タイミングぴったりだね。」

俺から手を離した舘さんが話しかければ被っていたフードが少し下がり見えたのはAの笑顔。

『二人ともお疲れ様。涼太くんありがとう。』

宮「これくらいなら何時でもどうぞ。それよりふっかたちは？」

『お店にそのまま。陽菜たちが暴れてると思うからお願いします。』

宮「行きたくないけど行こうかな。Aも用事済ませたら戻っておいで、送ってく。」

『ありがとう。』

じゃあ。とその場を離れた舘さんに手を振り見送ったAがこちらに向き直る。

『こんばんは、亮平くん。』

阿「こんばんは…っていやいや！何やってるのこんな時間にこんな寒い場所で！」

もう！と言いつつ首に巻いていたマフラーを抜き取り、コートのフードごとグルグルとAに巻きつけた。

寒さのせいか涙目で、それでもどこか楽しそうに笑った。

阿「A？」

『………このマフラー懐かしいなって。スノードームのお礼にって私が買ったんだよね。』

阿「うん、そうだね。」

『てっきり捨てられてるって思ってたんだけど……退院の日にこれ巻いてきてくれて、びっくりした。』

Aの手がマフラーに伸び、宝物に触れるかのようにそっと撫でていく。