No.75 ページ25
.
お腹を抑えひとしきり笑ったあと、ふぅと大きく息を吐き出した亮平くんはよく知る柔らかい笑顔だった。
阿「本当Aといると緊張とかカッコつけようとか、飛んでいくんだよね。」
『まあ、妹的な存在だもんね。』
阿「ううん、そうじゃない。」
え？と亮平くんの顔を見ると、今まで見た事のない程の柔らかく、穏やかで大人びた笑顔。
阿「俺さ、Aの事が好き。気づいたんだよね……心配しすぎるのも、大地のことであんなに振り回されたのも、何もかも、Aの事が好きだからなんだって。」
『……亮平くん』
阿『今さらだろって皆からも言われた。自分でもそう思うよ。どれだけ鈍感なんだろうって。』
照れくさそうに笑う亮平くんに何て返事をしたら良いのか困っていると、それを感じ取ったのか亮平くんの手が伸びてきてポンポンと頭を撫でた。
阿「今はさ、誰かと付き合うとかそんな事は考えられないと思う。だから急がないし、焦らないよ。Aはゆっくり答えを出して。のんびり待ってる。」
それまでは、今まで通りお兄ちゃんで。
そう言ってゆっくり立ち上がった亮平くんの顔はずっと穏やかな笑みのまま。
阿「今日はこれで帰るね。この事を伝えたかっただけだから。」
玄関へと向かった亮平くんを追いかければ靴を履き終えて玄関を開けるところ。
阿「外寒いからここで良いよ。また連絡する。」
再び伸びてきた亮平くんの手が頭を軽く撫でる。相変わらず穏やかな笑みで。
じゃあ、またね。とドアがゆっくり閉まり少しずつ亮平くんの姿が見えなくなって、パタンという音と共に完全に見えなくなった。
亮平くんが、私のことを…好き？
妹的な感じ、じゃないって……
所謂その、恋愛的な好きってこと？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 441人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひな | 作成日時：2020年5月31日 3時
