No.72 ページ22
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岩「んで、今さら恋心に気づいた阿部はどうすんの?」
阿「どうって…」
ほんの数時間前に自覚したこの気持ちをどうしようかと悩んだ挙句、相談したらこの有様。
溜息をつこうとしたらテーブルに置いてある携帯が震え、開いてみればAからの連絡。
おやすみなさい。
そういえば寝る前には連絡しろって煩く言ったんだっけ。
今の正常な意識なら、なんて馬鹿な束縛をしていたんだろうと恥ずかしくなってくる。
暖かくして寝るんだよ。
そう返せば、うん。と短い返事。
佐「なぁに阿部ちゃん、A?」
佐久間の声に顔を上げれば何故かニヤニヤしてる。
阿「…何でそんなニヤニヤしてんの」
佐「そりゃあ、ねぇ?」
グラスに残ってるビールを飲み干すと隣に座る照を見て、なぁ?と同意を求めていた。
岩「そんなデレデレしてたらこっちだってこうなるよ。」
佐「そうそう!ちょっと今の阿部ちゃん誰にも見せらんない。」
そう盛り上がる二人を他所に自分の顔を触りながら、そんな顔してるんだと改めて自覚する。
数年かかって気づいたこの恋心。
自覚してしまえば思い当たることの多いこと。
グラスに残った琥珀色の液体を眺めたまま押し黙ってしまった俺に、流石に気まづくなったのか、阿部ちゃーん?と、佐久間が遠慮がちに声をかける。
阿「俺さ、どうしたら良いんだろうね。」
大地の事が分かったときもそうだったけど今さらすぎるこの気持ち。
グラスの表面についた水滴を指で拭えば、あの日Aが涙と同じように一筋の水滴が指の先から滑り落ちた。
岩「決まってんじゃん。」
佐「ひとつしかねぇっしょ!」
岩「上手くいくかは阿部次第だけど。」
顔を上げると、ニヤニヤしていたはずの二人の顔が、何処か頼もしげに見えた。
阿「そう、だよね…うん。」
グラスに残ったビールを一気に煽り息を吐き出せば、目の前に今まで見てきたAの色々な表情が浮かんでは消えていった。
それはまるで走馬灯のようで、最後に見えたのは俺の名前を呼ぶAの柔らかい笑顔だった。
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作者名:ひな | 作成日時:2020年5月31日 3時