伸ばした手を (ページ8)

今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:218,680 hit

No.8 ページ8

.

照から聞いた内容は、Aと滝沢くんが従兄妹だと知って、大地から聞いた話とは食い違いが起きているということ。

俺にどう思うと聞いてきた照の目は少し不安げに揺れていた。

大地の話は全部嘘だ！

そう叫びそうになるのをその場で何とか抑え込んで飲み込んだ。

寝返りをうち瞼を閉じてみても、やはり寝られずそれならばと……起き上がりゲームをする事にした。

でも眠れないのは大地のことよりも、Aのことで。

掴んだ腕は照の手が一周するほどの細さだったってこと。

おもむろに手で輪っかを作ってみた。

それはいくら女性といえどあまりにも細すぎていて、しかもそれが手首ではなく二の腕だった。

照がそんなことで嘘をつくはずも無く、でも信じられないと思ったのもまた事実だ。

ふっかはどう思う。と投げかけられた言葉に「よく分かんねーや。」とその場から立ち去ってしまった俺はヘタレなのだろう。

大地とAが付き合い初めてしばらくした頃、大地がAの腕を殴りつけるのを偶然にも見てしまった事がある。

そこに居たのはいつもの大地では無く、冷徹で人を凄み威圧するかのような姿だった。

殴りつけた上にその部分を力強く掴みあげ、小さく縮こまるAにさらに詰め寄っていた。

あまりの衝撃的な光景にその場で声をかけてやることが出来ず、後日事務所であったAを問い詰めた。

誰にも口外しない事を固く約束させられて聞かされた大地とAの関係性。

それを聞いてたとき、どうして良いのか分からなくなった。

この子を助けるためには、と。