No.6 ページ6
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夏の暑さを鬱陶しく感じ、少し苛立ちながら歩いていたら少し余所見をした所で、前から歩いてきた人にぶつかった。
ふらついた人の腕を掴んで思わずその細さに驚いた。
掴んだのは手首ではなく二の腕なはずなのに、自分の手が一周する。
……なんだこの病的な細さ。
顔を上げればそこにAがいた。
二股は当たり前、酷い時は三股してその上スタッフと寝てる。なんて噂が流れ始めたのは1年くらい前だったか。
それまでは皆の輪に居たし、俺らやこいつのグループのメンバーからも猫可愛がりされていた。
でも後輩からの話を聞いて、最低なやつ。と思ったのは確かだ。
それは今も思うところはあるけれど、それにしてもこの腕の細さだけは無視出来ない。
思わず眉間にシワが寄るのが自分でも分かってしまった。
申し訳なさそうな顔に手を離すと、頭を下げ足早にその場を去っていってしまった。
そのAの後ろ姿は以前よりも小さく頼りなかった。
暑さから逃げるようビルに入れば自販機の前に何処か不機嫌そうな翔太。
岩「おつかれ。」
渡「おー…」
岩「なに、機嫌悪いじゃん。」
渡「……Aと一緒だった。」
岩「さっきそこで会ったわ。」
イラついている翔太を宥めつつ、小銭を自販機に入れボタンを押す。
渡「あいつ、ムカつく。最低なくせして曲かかれば別人みたいで……魅せられるから更にムカつく。」
岩「あれはもう、才能の塊だから。」
Aのソレは滝沢くんも諸先輩方も舌を巻くほど。
けれどあの噂がその評価を上回るほど広がってしまい、アイドルとしての女性としての価値はかなり下がった。
渡「大地の奴も女運悪すぎだろ。あいつの前に付き合ってたスタッフも似たような別れ方してなかった？」
岩「そうだったっけ？」
渡「そーだよ。あぁ、女って怖えわ。」
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作者名：ひな | 作成日時：2020年5月24日 23時
