伸ばした手を (ページ48)

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No.48 ページ48

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Aと手を繋いだ時、Aの手はほんのり冷たかった。

そして自分の手よりひと回りも小さいAの手は握り心地は少し悪いけれど

握り返してくれたことが嬉しくて離れないようにとしっかりと握った。

お店に着く頃にはAの手の温度は俺の手の温度と同じくらい温かくなっていて

離すのが勿体ないと思ったけれど、みんなが見たら煩いだろうななんて思った。

店員さんに案内された座敷の前で手を離し、中に入れば口々に遅いやらやっと来たやら文句が聞こえた気がした。

阿「もうさぁ、お願い叶えてあげたんだからもう少し敬ってよ。」

ほら。と靴を脱ぎ終えたAを目の前に立たせれば一瞬静かになった。

それぞれが久しぶりなんて言いながら目元や口元を緩めている。

宮「Aこっち空いてるからここおいで。」

舘さんに呼ばれたAの後ろをくっついて行けばひとり分しか空いていなくて、ちょっとどいてと翔太を押しのけて自分の座る場所を確保した。

渡「おまっ、佐久間の隣空いてんじゃん！」

阿「遠いしAの隣がいい。翔太あっち行って？」

渡「どこが遠いんだよ…わがままかよ……」

呆れ返った翔太がグラスを手に取り少し不機嫌そうに佐久間の隣に座り直した。

宮「Aなに飲む？」

阿「アルコールはダメ、お茶系もカフェイン入ってるからダメ。お水か野菜ジュース」

『………やだ。』

岩「阿部、Aに決めさせてやれよ。」

阿「この後薬飲まなきゃいけないんだから気をつけないと。」

宮「薬はすぐ飲むわけじゃないんだから、今はいいんじゃない？」

『照くん、私りんごジュースにする』

そう言えば照は襖をあけさっさと注文を済ませてしまった。

Aはというと目の前に座るふっかとマンガの話しやらゲームの話しやらで盛り上がっている。

それを見て照に言い返そうとした口をそっと閉じた。

いつもこんな感じだった気がする。Aは自分を挟んで誰かが言い合いをしていたとしても我関せずって感じで

照も同じことを思っていたのか、ちょっと呆気に取られたような顔。

何か言いたげな顔をしていつつもテーブルの上の料理に手を伸ばし始めた。