伸ばした手を (ページ45)

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No.45 ページ45

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いたずらっ子のように笑いながら謝るA。

躊躇も遠慮もなく向けられるその笑顔に、からかわれた事など飛んでいった。

胸の辺りがあたたかくて嬉しくて仕方ない。

阿部ちゃん変な顔。なんて翔太に言われたけど気にしない。

だって本当に嬉しくてしょうがない。

暫くしてAのマンションにつき、ここに来るのも久しぶりだなぁ。と感慨にふけっていると置いていかれそうになりエントランスまでAを送る。

渡「ここまででいいか。」

『うん、ありがとう。お茶でもって言いたいけど、多分ロクなのないから。』

渡「また後でいいよ。」

だよな。と翔太に肘でつつかれる。

阿「ああ、うん……また今度でいいよ。」

『じゃあ、また今度ね？』

Aからの返事と笑顔。

”また今度”

じんわりと広がるその言葉。

次がある、また会える……また、笑い合える。

渡「あ、お前の連絡先聞いていい？」

阿「あ、俺も。」

『じゃあ、後で連絡する。連絡先一年前と変わってないでしょ？』

うん。と頷いてふと思う。

阿「ねぇ、A……俺たちの連絡先消してないの？」

『うん、消してないよ。だって……』

阿「だって、何？」

『ある意味、私があの世界で生きてきた証だもん。』

なんてね。と、照れくさそうに笑うA。

本当にあんな事があっても変わらないんだなと痛感させられ、もふもふのフードごと頭を撫でた。

くれぐれも体調に気をつけなよ。と言い残して翔太とマンションを離れた。

渡「てか、阿部ちゃんさ休みなんだから部屋まで行けば良かったじゃん。」

阿「そう思ったんだけど疲れてるだろうし、また会えるから急がないよ。」

渡「……あっそ。」

阿「翔太、ありがとね。」

渡「別に、阿部ちゃんのためじゃないから。」

でも、翔太が焚き付けてくれなかったら
俺はAと合うことも胸が軽くなることもなかったよ。