伸ばした手を (ページ44)

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No.44 ページ44

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翔太くんの車に乗り込み、数ヶ月ぶりに自分の部屋に向かう。

膝の上にぬいぐるみを抱え込むと、左側には鼻をすする亮平くん。

懐かしいような、胸の奥がくすぐったいような、でも何処か気持ちが落ち着いてしまう。

『亮平くん、落ち着いた？』

亮平くんの顔を覗き込めば、真っ赤な目と鼻で何回か頷くその姿に頬が緩んだ。

阿「ごめん……なんか、情けないね。」

『…………亮平くん、』

手の甲で涙を拭っていた亮平くんがこちらを向く。

『そんなの今更でしょ。』

阿「え………」

渡「ふはっ、確かに今更だな。」

運転席からの賛同の声にそちらを見ればミラー越しにこちらを見ながら翔太くんが笑っていた。

ねぇ。と言えば、なぁ。と返ってきて、お互い小さく笑っていたけれど段々と笑い声が大きくなっていく。

こんな風に笑うのは何時ぶりだろうか。

こうやってこの人と笑いあうのはいつ以来だろうか。

阿「二人してちょっと酷くない？」

『…………ごめんね？』

少し痛くなってきたお腹をさする。

何とか笑いを堪えつつ亮平くんに謝れば、拗ねた顔がちょっと驚いたような顔になり

それが徐々に嬉しそうな顔へと変わっていった。