伸ばした手を (ページ41)

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No.41 ページ41

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いつもより少しいい格好しないと、端に追いやられたままの袋が目に留まる。

阿「なんだったっけ……」

引っ張り出したソレはAがくれたマフラーで、大地のことがあるまでは大切に使っていたもの。

結局そのマフラーを中心に服を用意して、本当なら勉強するはずだったけど、早々にベットに入り就寝。

翌朝、準備を済ませた頃、来客を知らせるチャイムが鳴り翔太の車で病院に来た。

渡「ほら、行けよ。」

阿「え、翔太は？」

渡「俺はあとでいい。」

早く行けよ。と肩を押されその勢いでAへと近づいた。

滝沢くんが来ないと分かっているからか、そのまま病院の敷地から出ようと歩き始めたAを思わず呼び止めた。

自分でも驚くほどカスカスの声。
僅かに届いたのか、Aの足は止まり小さく左右を見渡している。

大きく息を吸い今度はしっかりとその耳に届くように名前を呼ぶ。

阿「A」

普段より弱い声色
けど、届いたようでゆっくりとこちらを振り返ったAは、視界に俺を捉えるとピタリと動きを止めた。

阿「おか、えり……いや違うな……えっ、と…ちょっ、ごめん……」

いざ本人を目の前にするとテンパってしまって話せば話ほど酷い有様。

ああ、どうしよう。言いたいことはひとつなのに。

口が段々と動かなくなってきた頃、小さく吹き出す声が耳に届いた。

Aを見れば腕に抱いていたぬいぐるみに顔を押し当てて表情は見えないけど肩が揺れている。

『亮平くん、テンパリすぎ』

ぬいぐるみが動けば、あの日よりふっくらとした顔が楽しそうに微笑んだ。

また、Aの笑っている顔が見れた。

何だか胸いっぱいになり、もっと見ていたいその笑顔が徐々にぼやけてきたけれど、緩みそうになった頬を引き締め奥歯を噛み締めた。

阿「信じてやれなくて………護ってやれなくて……ごめん。」

身体を折り曲げ頭を下げた。