伸ばした手を (ページ40)

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No.40 ページ40

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植え込みの端に腰をかけ、ぼんやりと空を眺めていると、隣に座っている翔太が何かに反応し病院の出入口を指さした。

それを辿っていけば、看護師さんと何か話しているAの姿がそこにあって

看護師さんから被せられたフードで顔が見えにくくなってしまったけれど、そのフードに付いているソレがまるで垂れ耳のウサギのようで。

翔太も同じことを思っていたのか、ウサギかよ。とどこか笑い混じりでつぶやいた。

ふっかから連絡を貰ったのは昨日の夜のこと。

深「滝沢くん、急に仕事が入ったみたいでAの退院に付き添えないんだって。ご両親も来れないから俺にって連絡来たんだけど、俺も明日仕事入っちゃって。」

そう言われて明日オフだから俺が行く。とは言えなかった。

佐久間にAが許しを乞う人を突き放したりする奴じゃないだろう。と言われた時、その通りだと思った。

思ったけれど、いざその時が来たらどんな顔で、なんて声をかけたならと携帯を握りしめ生唾を飲み込んだ。

黙り込んだ俺の耳にふっかとは違う声が聞こえた。

「阿部ちゃんが行かないなら俺が行く。」

阿「は……しょうた？」

渡「どうせ俺も仕事オフだし、退院の日にシケたツラしたやつが来たって迷惑だろうしな。」

阿「そんな顔で行くわけないでしょ！」

渡「へぇ、じゃあどんな顔して会うわけ？変顔？真顔？」

阿「普通の顔！」

渡「あっそ。じゃあ、明日迎えに行くから………逃げんなよ。」

売り言葉に買い言葉で通話を終わらせるとふと気づいた。

俺翔太に上手いこと乗せられた？

でも、こうでもされなきゃ俺はきっと二の足を踏んでばかりだっただろう。

時間を指定された翔太からの連絡に準備の時間と逆算しながらクローゼットへ歩みを進めた。