伸ばした手を (ページ32)

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No.32 ページ32

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椅子に座り足首に付けられた重りを数回上げ下げするだけでじんわりと汗が滲み出てくる。

むぅ、と身体を震わせ足を上げていると誰かに呼ばれたような気がした。見渡せばリハビリ室のガラスの向こうに秀明くんの姿が見えた。

手を振れば笑顔で手を振り返してくれて頑張れ。と口が動くのが分かった。

理学療法士のお兄さんからいわれた回数をこなしてから汗を拭いてリハビリ室を出れば椅子に座っていた秀明くんが立ち上がり、持っていた飲み物を投げてきた。

両手で受け取り喉を潤していれば額に吹き出した汗を拭いてくれた。

滝「だいぶやれるようになった？」

『うん、毎日頑張ってるもん。』

滝「そういえば、さっき先生と話してきたけど体重も筋力も戻りつつあるから、このままいけば来週には退院できるぞ。」

『ほんと？やったぁ！』

両手を上げて抱きつけば調子いい奴と頭を掻き乱され、肩を抱かれながらすっかり自分の部屋とかしている病室へ。

滝「それからこれ、預かってきた。」

病室に入りベットに腰掛けると秀明くんがジャケットのポケットから取り出したのは一枚の封筒

宛名の書かれていないそれを受け取り、裏をひっくり返せば深澤辰哉の文字。

滝「この前、事務所で会った時に順調に回復してる、退院も近いぞって話したら今日朝イチで渡してくれって頼まれた。深澤お前が倒れたことずっと気にしててさ。」

読んでやって。と促され糊付けされていない封筒から便箋を取り出すと文字を目で追う。

そこには、助けてやれなくてゴメン。という謝罪の言葉と身体を心配する言葉。
復帰を待ってること、それは辰哉くんだけじゃなくたくさんいること。
そして亮平くんが痩せて太ったと。

『痩せて…太った？』

滝「ん？なんて？」

椅子を目の前まで引っ張って腰掛けた秀明くんに手紙を見せれば、ああ、と何度か頷いてこちらに手紙を返してきた。