伸ばした手を (ページ28)

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No.28 ページ28

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手を通して阿部ちゃんの嗚咽が伝わってくる。

こんな時こそ、なんて思うけどうまい言葉が見当たらず唇を噛み締めた。

あの日一日で所属タレントたちに広まった大地の悪行。

今日仕事が一緒なはずの後輩に連絡して聞いてみたら現場には来なかったと。

根性無しとはまさしくアイツの事だな。

それに比べて表舞台にたち続けたAはどれだけの根性を持っていたのかと思い知らされた。

今さら気付かされるなんてね。

渡「…Aの容態分かったやついねぇの？」

翔太の声に使い物にならなくなった阿部ちゃん以外は首を横に振る。

渡「そっ、か……だよな。」

岩「ね、滝沢くんは？」

渡「この状況で教えてくれるか？」

宮「……無理、だろうね。」

正直、打つ手は無かった。

Aをあんな状態になるまで追いやった俺らに滝沢くんが手を差し伸べてくれる訳もないし

佐「せめて、容態だけでも分かればね。」

宮「そうだね……まあ、とりあえずこれ食べようか。」

涼太がすっかり冷めきってしまった料理を指刺せば、みんなモソモソと食べ始める。

多分泣き止んだであろう阿部ちゃんは服の裾でゴシゴシと顔を拭き、温くなったビールを流し込み始めた。

そんな時、ずっと項垂れているふっかのスマホの着信音が部屋中に鳴り身動きをしないふっかを照が小突いた。