伸ばした手を (ページ27)

今日:4 hit、昨日:13 hit、合計:218,695 hit

No.27 ページ27

.

ふっかの言葉は一気に怒りを沸点まで高めるのには十分で、気づけばふっかの胸ぐらを掴みあげていた。

それが、ただの八つ当たりだとしても…解っていても止められなかった。

ふっかがAの事をもっと早く言っていれば……状況はかなり変わったかもしれない。

でも、起こってしまったことは変えられない事実で。

あんなに痩せ細ってったのを見てみぬ振りをしたのは間違いなく俺自身。

周りと一緒に陰口をたたき、何かの拍子に目が合っても冷ややかな視線しか送らなかった。

佐久間に手首を捻られ、腰を下ろせば襲ってくる罪悪感。頭を抱え、胸に広がる痛みに涙が込み上げてきた。

『亮平くん。』

どこで会っても俺を見つけると溢れんばかりの笑顔で駆け寄ってきたAを、その笑顔を守りたいと思っていたはずなのに

阿「なん、でっ…おれ、っ……」

全く真逆のことをしていた俺が情けなくて

今すぐAに会って謝りたくて。

でもこの1年、たかが1年で変わってしまった俺たちの関係はそれすらも許してくれない。

阿「ごめ、ん…A、ごめっ…」

背中をさすってくれる佐久間の手が温かくて

俺の涙は留まることをしらなかった。