伸ばした手を (ページ26)

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No.26 ページ26

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岩「どういう事だよ、それ。」

隣の照からは普段より低い声。
正直なところ、殴られる覚悟で来た。

大地の本性がバレた事はどうでも良かった。むしろ、ざまぁみろだ。

けど、Aが倒れたことはまるで鈍器で頭を殴られたかのような衝撃だった。

前兆はあった。

具合の悪そうにしていたあの日。

大丈夫だからと俺を追い払ったあの日。

あの時、無理矢理にでもそばにいてやれば倒れることは無かったかも知れない。

以前見た事を、そしてAから他言無用と口止めされていたことを包み隠すことなくぶちまけた。

殴られるなら、照か翔太だと思っていた俺の胸ぐらを掴みあげたのは阿部ちゃんだった。

勢いよく立ち上がったからか、テーブルの上の食器が音を立てて揺れる。

阿「何でもっと早く言わなかったんだよ！いくら口止めされてたって、俺らや陽菜たちには言っても良かったんじゃないのかよ！」

全くもってその通りだ。

言い返す言葉すら見つからない。

俺の胸ぐらを掴む阿部ちゃんの手がどんどんと力強くなっていくのを、両端から照と舘さんが手を伸ばす。

阿「Aが！Aがどんな思いで！」

そういう阿部ちゃんの声は震えていた。

息が詰まる中、静かに立ち上がった佐久間が阿部ちゃんの手首を掴んで簡単に捻りあげた。

佐「阿部ちゃんストップ。一旦落ち着け。」

阿部ちゃんの手が急に離れたせいもあって一気に入ってきた空気に噎せてしまう。

渡「ふっか、大丈夫？」

深「んっ、」

阿部ちゃんは力なく座るとそのまま頭を抱えてしまった。

誰も口を開かない静かな空間に嗚咽がきこえ顔を上げれば、阿部ちゃんの肩が小さく震えその背中を佐久間が摩っているのが見えた。