伸ばした手を (ページ3)

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No.3 ページ3

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「A、お前は１回この世界から離れろ」

私の酷い有様を見た従兄弟の秀明くんにそう言われたけれど、ここまで築き上げてきた物を簡単に手放す気にもなれず

LIVEや舞台中に倒れてそのままあの世へ、なんて思うのは病んでいる証拠なのだろう

けれど、そう思えば思うほど気合いは入るしスタッフの皆さんからも魅せ方変わったね、なんて褒め言葉を貰うようになった。

まあ、それに関しては彼に感謝するとする

そうして望んだレッスン

この身体に、魂に、物語の主人公を憑依させればいい

ここにいると、私はここだよと

鏡に映る自分に向け、そして鏡越しにこちらを見ている彼らに向けて挑発的に笑ってやった

「A、最高だった。」

振付師の先生にも褒めて貰えたし今日はよく眠れそうな気がする。

先生が退出すればあからさまな舌打ちが耳に届いたけど。

荷物を纏めシャワーを浴びてから外に出れば照りつける太陽が一気に身体から汗を吹き出させた。

まあ、薄手とはいえ長袖を着ているのだから仕方ない。でも痩せ細ってしまったこの腕を世間の皆さまにひけらかすほど、良い趣味を持っているわけでもないのだが。

少し歩いた所ですれ違う人とぶつかり身体がよろけてしまう。

ぶつかってしまった相手が即座に腕を引いてくれたので転ぶことは無かったけれど、気をつけなければ。

『ありが…あ、ひか…岩本くん。』

私の腕を掴んでくれたのは照くんで、私の顔を確認すれば眉間にシワを寄せ手をパッと手を離した。