伸ばした手を (ページ13)

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No.13 ページ13

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「………お客さん、着きましたよ。」

運転手さんの声に閉じていた瞼を開けた。

「すみません、つい寝てしまって……」

料金を確認して支払いを済ませると運転手さんが心配そうな顔をしてこちらを見つめてきた。

「大丈夫かい？」

大丈夫です。ありがとうございます。と運転手さんに返しタクシーから降りるとむせ返るような暑さにクラっとした。

会場の入口まではあとちょっと、今はその距離ですら遠い。

瑞「A、ちゃん？」

声の方を振り向けば瑞希ちゃんがいてしっかりと私を視界に入れるなり驚いたように口元に両手をあてていた。

『あ、瑞希ちゃん……』

ニコッと笑みを浮かべて名前を呼べば瑞希ちゃんが慌てて駆け寄ってきて私の身体を支えてくれた。

瑞「いつから？こんな……あんなに元気そうに話してたのに…」

暑さからか冷や汗なのか分からない汗が滲むなか、額に張り付いた髪を瑞希ちゃんは優しい手つきで除けてくれた。

その手から伝わる優しさが私に力をくれた。

『今日を乗り切ったらね、暫くお休みするの……だから、だからね今日頑張るんだ。瑞希ちゃんの復帰の日、だから……』

瑞「分かった。とりあえず、中入ろ？」

『瑞希ちゃんがね、復帰してくれるっていうから、頑張れるの……』

なんだか会話が成立していないような気がする。

もう喋らないで！なんて瑞希ちゃんが怒っているような気もするけど、どうにも口が止められない。

この曲が好き、この演出がね？とか瑞希ちゃんに会えて本当に嬉しいんだよ、とか言っているうちに気づけば誰も使っていない部屋のソファに寝かされ

ここにいて。と言い残して瑞希ちゃんに何処かに走っていってしまった。