Begin to move 8(RW) ページ36
それは、決して愛しくて抱きしめている、という風ではなかった。
ヒョンに比べたら20cm近くも小さい彼女を、そっと包むようにではなく。
彼女の肩にうなだれたみたいに頭を乗せて、背中に回した手で力任せに引き寄せるように。
ただ甘えて、救いを求めるだけのような、一方的な抱擁。
ヒョン、それはダメだよ、、、
ヒョンの気持ちはわかるけど、
そんな身勝手なハグじゃあ、女の子はかわいそうなんだよー
YS「ごめん。もう少しだけ。
もうしないから、こんなこと」
はじめ驚いた顔をしていた彼女は、だけど。
どこかきつくて痛そうにしながら、ジッと待っていて、そして。
「行ってらっしゃい。みんな大丈夫だから、何も心配いらない」
そう、ひと言だけ、きっぱりと言ったんだ。
ヒョンはピクっとして、それからゆっくり彼女を離してやり。
いつものヒョンの、はにかんだみたいな顔で。
「うん」
そう言って、ふと僕らを振り返りー
突然我に返って、
猛烈に、うろたえた。
YS「ああっ！あっ、お、おま、うわー！やあ、はあっ！」
はあ。
かっこ悪いよ、ヒョン。
せっかく、ちょっと良かったのにさ。
それにしても、このAさんって。
弱っちそうに見えて、なかなかどうして。
肝が据わってるというか。
芯の強い人みたいだね？
うん、僕嫌いじゃないよ。
ちぇっ、ヒョンってほんとボーッとしてるくせにこういう運が良いから、時々腹立つんだよねえ。
僕はなんだか本気でムッとしてしまい、思いきり口をとんがらせて言った。
「ヒョン、後は何とかしときますから。そろそろ、帰りましょう、ね。
あ、もちろんAさん達とは別々にだからねっ！
お持ち帰りは禁止！！絶対、だめ！！！」
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作者名：さこぽ | 作成日時：2014年9月5日 18時
