君でなければ (ページ21)

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悲しくさせるから１ページ21

それから数日。
新しいシステムで始まった仕事は、私が実質を仕切る立場であるために、それはもうー忙しかった。

「イェソンは来月、入隊なのよ」

ミヨンさんの言葉が、小さなトゲのように心に突き刺さっていたものの、とてもじゃないけど、目も手も止めて考え込めるほどの余裕のない日々だった。連日残業の嵐で、帰宅は深夜に近かった。

だからその日、ようやく仕事が回りだし、定時で仕事を終えることができたのは、ラッキーとしか言いようがなかった。

A「お疲れさまでした。明日は空港に寄ってから出勤しますので、今日はお先に失礼します」

駅までの道を歩きながら、ふとメールの着信に気づく。

さすがに朝鮮語学科を出ていると、大学時代の仲間が何人かは、今でもこちらで仕事をしているわけだけど。

そのうちのひとり、今でも時間が合えば訪ねあう間柄の、まりこからだった。

〈A、久しぶり！ねえ、今韓国にきてるんだって？
今日、時間あったら少し会わない？〉

ここ最近の疲れはハンパなかったし、ちょっと迷ったけれど。
OK、の返信を返す。

「あ、こっちよこっち♪」

オープンカフェの丸いテーブルに座るまりこが、手を振る。

A「待たせちゃったかな？ごめんね」

まりこ「ううん、そうでもないよ。
ねえA、こっちには転勤してきたんだって？長いの？」

A「うーん、期間はわからないけど。数年はこっちかな。もうダメ、完全に婚期逃すわ」

まりこ「何言ってんの。こっちで見つけちゃえば？
あ、、、やっぱりダメ？反対される?」

A「うーん、どうだろう。もう歳だし、今はそんなことないとは思うけど。
あれから付き合った人はみんな日本人だったし、結婚考えるまでいかなかったから、わかんないね」

まりこ「そうか。でもさ、あんたあれからちょっと臆病だもの。振られるっていうか、自分が傷つくの、そういうの怖れて。
もう一度くらい、思い切りよくいってみたら、何か変わるかもよ？
せっかく異国の地で、ひとりで暮らしてるんだから。心機一転、チャレンジ、チャレンジ！」

A「人ごとだと思って～
あ、それより、まりこ確か、アイドル詳しかったよね？」

何となくあのことは言えず、単にこちらに来てからSJを最近好きになったので、いろいろ教えてほしいと頼んでみる。

まりこ「いいわよ。何よ突然、どういう心境の変化？今までそんなの興味なかったのに」

まりこは笑ってタブレットを取り出した。