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「えぇ、知っていますよ。今の君より、よっぽど。君は全てを思い出したいですか?」


その問いに私はわからず視線を床に落とす。

思いだすことが果たして、正解なのか。
私にはわからない。



『何も覚えてない可哀想な子。忘れた方が幸せ?忘れられた人の気持ちも考えずに、"あの女"は君の記憶を塗り替えた。普通の人間として生かしたくて。そんなの無理な話しなのに!君は自分が何者か、自分で考えたこともないんだね!!』


蘇るあの時のテヒョンの言葉に、頭を振る。
私だって、好きで忘れてるわけじゃない。

最近よく考える。
昔の自分がどうだったのか。
だけど、頭の中にモヤがかかったように、思いだせないんだ。

家族のことすら、思いだせない。
そもそも…私には家族が、いたの?



「君が能力を上手く使えない理由を教えてあげましょうか?」



悩む私をよそにその人はそう言い、私の頭を指差した。



「興味深い研究結果なのですが、能力と脳は非常に密接した関係性にあるようなのですよ。君自身、その曖昧な記憶のせいで能力に制御を掛けているんです」

「制御…」


だとしたら、全てを思い出せば、私はちゃんと能力が使えるようになる?
そうすれば…みんなの力になれる?



「どうしますか、A?全ては貴方次第です」



顔を上げ、私はその人の顔を見つめる。

正解なんて、その時にはわからない。
いざ過去を振り返って、あの時ああしていれば、と人間は後悔をする。



「ですが、よく考えて下さいね。せっかくその能力があるのに、使いこなせず仲間を助けることが出来なかった…なんて、悲しい思い、したくはないでしょう?」

「………」


ずっと助けられてばっかりだった。
何度、この能力が使えれば。と考えたか。

…こんなことを考えるぐらいなら、答えは端から決まっていたのかもしれない。



「どうしたら…思いだせますか?全てを…」




やらない後悔より、やった後悔の方がいいなんて、誰が言ったのだろう。
だけど、今の私にはそれしか選択肢がないような気がする。



「もちろん」



私の言葉に、その人はにやりと静かに笑っていた気がした。

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yui(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます!それは誰が為に 5公開しました。 (2020年5月22日 3時) (レス) id: b7a9992a65 (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - 伊狐さん» ありがとうございます!それは誰が為に 5公開しました。 (2020年5月22日 3時) (レス) id: b7a9992a65 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ - いつも読ませていただいてます。とっても面白いです。パスワードを教えていただきたいです。今後も楽しみみしてます! (2020年5月22日 2時) (レス) id: 7b2d92024a (このIDを非表示/違反報告)
伊狐(プロフ) - この作品が大好きでお気に入りです!パスワード教えてください!これからも応援しています! (2020年5月22日 2時) (レス) id: c76b536d3e (このIDを非表示/違反報告)
レオナ(プロフ) - ジュンピ落ちがいいです!これからも頑張ってください! (2020年5月11日 23時) (レス) id: 4de243fabb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:yui | 作成日時:2020年3月30日 22時

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