キツネさんと紅一点 (ページ5)

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現在時刻、深夜3時。
………やばい、寝れない。正確には、寝れなくなった。
怖い夢を見て、寝れなくなるなんてそんな子供じみてるのいつぶりか。
しかもかれこれ2時間もこうしてる。すごく寝れない。

寝なきゃと思うほど寝れなくなるもので。
スマホの画面はずっと、どっかの誰かさんとのトーク画面。
同じマンション、同じ階、同じ家。
だけど部屋に行くには申し訳ない。だけどせめて声だけでも聞きたい。
この葛藤を続けて2時間、ようやく決心がつきまして、ダメ元でかけてみる電話。
いっそ出なくていいと思うときほど、

「……あ"？」

出てくれる、めっちゃくちゃ不機嫌だけど。

「お前…何時だと思ってんだよ」
『夜中の3時』
「ふざけんな、切る」
『やだ』
「こっちは寝てんの」
『……もうちょっとだけ』

夢の中では、私の手の届かないところに行っちゃった人の声が耳元でするだけでこうも安心するものか。
出来ればずっと話してて欲しい、1人で。そしたら寝れる気がする。

「…なに」
『なにが』
「なんで電話してきた？」
『なんとなく』
「そういうのいらないから、言え」
『……笑われるからやだ』
「笑うとしたら心の中に留めておく」
『…………怖い夢みた…から、けどもう大丈夫ありがとうおやすみ』

怖い夢みて、電話かけたんだった。何これ、なんかすごい恥ずかしい。
相手がウォヌってとこが更に恥ずかしい。こんなこと初めてした。
急に怖さとか不安よりも羞恥が勝って逆に寝れないじゃん、これ。
朝まで元気に徹夜コース決定のお知らせを脳内で流してたら急に開く部屋のドアに心臓が止まるかと思った。

『………こっわ、』
「来てやって第一声がそれだと帰りたくなるわ」

入口を見れば、寝癖全開、目すらいつもの半分しか開いてない、とてもカラットには見せられないようなウォヌ。
ため息をついて掛け布団をまくってきたと思ったら無言のベッドインに、言葉を発する間もない。

『……どういう状況？』
「怖い夢みたガールを抱きしめに来てあげた状況」

言葉と同時に腰に回る腕に思わず距離を取ろうとすれば、背の高さで少し上にある向き合った彼の眉間が寄る。