�� ページ9
○DOYOUNG
まるで、初めてデビューした日に戻ったみたいだ。
「おはようございます」
「A、おはよう」
昨日テンがもしかしたらと言っていたことが、本当に起こってしまった。Aに挨拶を返したユタヒョンが、顔をあげて俺を見る。首を縦に振る俺を見て、ヒョンもゆっくりと頷いた。楽屋に着けば先に来ていたマークが、ヌナに連れられて行ってしまうAを見て、ドアが閉まるのと同時にヒョン！と駆け寄って来る。俺は今、どんな顔をしているんだろう。
「ドヨンイヒョン、Aが」
『うん、合ってる』
「でも、昨日はあんなに楽しそうだったのに」
『とりあえず、マークは自分のことを考えて』
「でも！」
『大丈夫、俺が大丈夫にする』
そうマークに言っておきながら、頭の中は絡まったまま、Aの隣の席に腰を下ろす。ぽつりぽつりと話をするけれど、表情はさっきからずっと一緒の、まるで氷のような、誰も寄せ付けないような顔をして、握らされたカイロでさえも、役目なんて果たせずに終わろうとしている。
「A、今日は一段と綺麗だから」
「…オンニ急にどうしたんですか」
「Aが笑ったら、もっと綺麗になるからね」
ちょうど目を閉じていたタイミングで交わされた会話に、涙が出そうになるのを必死に堪えた。組んでいた両手にさらに力を込めたのだけがわかって、ヌナが俺にもカイロを渡す。暖かいカイロが、俺の熱まで奪っていくみたいだ。
「ドヨンア、」
『…わ、びっくりした』
「Aならもう行ったよ」
『えっ本当に？』
ぐるりと見渡した視界には確かにAはいなくて、立っているテヨンイヒョンと目を合わせる。なんだかまた、唐突に、涙が出てきそうになった。今日はもしかしたら、Aより先に俺が泣いてしまうかもしれない。
「ねえドヨンア」
『なに？』
「もうあの時の俺たちじゃないよ」
『でもAは、』
「Aも、あの時のAじゃない」
俺は、あの日のAを、まるで偽物だと言っていたけれど。昔からたくさん、いつだって一緒にいたAが、あの日だけは、俺たちは他人だと突きつけられているみたいなそんな目をしていて、少しだけ怖くなったのだ。あの日のAと、いつものAを同じにしたくなかったのだ。
「今ね、ジョンウが側にいる」
『ジョンウが？』
「あの子は簡単に、Aの大親友って言ってるんじゃないよ」
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
