ブルーミング ページ36
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改めて自分の姿を鏡で確認しながら、久しぶりに長く伸ばされた髪が肩にかかる。いつもなら一緒にいるメンバーが誰もいない、静かな控室にいる自分が、なんだか別の世界にいるみたいだった。
大丈夫。だって今まで、ずっとずっとこのために準備した。それなのに、朝からずっと早く動き続けている心臓が、止まりそうにない手の震えが、じわりじわりと追い詰めて行く。
見てしまったのだ、夢で。練習してきたことが全部出来なくて、声も出なくて、代わりに涙が出る夢を。夢の中で、メンバーはどんな顔してたんだろう。どうして、大切なことだけ、すぐに忘れてしまったんだろう。
「A、いる？」
まだ集合するまで時間がある。情けない顔をした自分が、鏡越しにマークと目を合わせた。動こうとしても何故か体は固まったままで、マークがこっちまで歩いてくるのを、目だけが追っている。
「これ、俺たちと歩く時羽織ってって」
『あ、ありがとう』
「すれ違ったヌナが急いでたから、その、俺が来たんだけど」
マークが持っていた上着が肩にかけられて、なんとか上げた顔で、やっと鏡越しではなくちゃんと目が合う。泳ぎまくった目は、どこを見たらいいのか分からなくて、下を向くたびに、いつもよりずっと上げられた睫毛が視界を邪魔する。寒くない？という言葉に、上手く頷けただろうか。
「今日、Aを俺たちのところまで、一緒に行くのが俺だから」
『そんなのいつ決めてたの？』
「昨日Aが来る前に、ドヨンイヒョンが」
『ああ、そうなんだ』
「俺ジャンケン強かったんだよ」
『うん、良かったね』
さっきから、自分の言葉なのに、まるで自動で口が開いているみたいだ。マークを困らせたい訳じゃない。寧ろ隣にある椅子に座ってもらって、何ならそこにあるクッキーもあげたいくらいだ。クリスマスだけど頑張ろうねとか、綺麗な髪色になったねとか、終わったらケーキとか食べようとか、やりたいことも話したいこともたくさん出てくる。頭の中では。頭の中だけでは。
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
