ペーパームーン 3 (ページ32)

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セットしていたアラームが鳴る。画面をタップして、並んで座っていたAが俺と向き合った。俺の手を握ってあったかいねなんて言うから、瞬きの数が増えてしまう。

「オッパもちゃんと言ってくださいね」

『俺も？』

「うん、約束」

絡まった小指と合わさった親指が、じんわりと熱を持つ。初めて会ったとき、初めて言葉を交わしたとき、初めて手を握って、初めて涙を拭ったときから、どれくらい経つんだろう。

『昔、俺が怖かったって本当？』

「あはは、昔の話ですよ」

『……実はね、俺もちょっとだけ、Aのことが怖かったの』

怖いというか、多分、どう接したら良いのか分からなかった。急に俺たちのところに入れられる女の子の気持ちなんて、きっと俺が考える方が狡くて、しかも誰も知らない女の子じゃなくてAだと言うから、余計に。

ドヨンやテンに見せる笑顔を、いつしか俺にも見せてくれるようになるんだろうか。リーダーとして、この子を守れるだろうか。この子を守れるだけの力が、俺にあるんだろうか。そもそも嫌だと言われたら、俺は、何と言ったら良いんだろうか。

「じゃあお揃いだ」

『これ、言うつもりじゃなかったんだけど』

「でもちょっと誤解がありますね」

『誤解？』

「わたしはオッパが怖かったんじゃなくて、憧れてたんだよ」

『…Aが俺を？』

「だから、これからずっと一緒なんだ〜って思ったら、嬉しかった」

Aを迎えに行く前日、悩みすぎてあまり眠れなかった自分に教えてあげたい。俺が怖いと思ってしまった子は、最初はあんまり良い顔をされないけれど、それからずっと、そばに居てくれる。甘いものが好きで、一緒にお菓子を食べてくれる。食べたら眠くなって、たまに俺の肩で眠ってくれる。俺に、憧れてるって、言ってくれる。

「いつか、テンオッパと2人でやってたときみたいに、わたしもオッパと何かやりたいんです」

『それはむしろ、俺から頼みたいくらいだよ』

「本当？じゃあもう一回約束」

ユタに教えてもらったと言いながら、日本語の約束の言葉を言って、破ったら痛いから叶えようねとにっこりと笑う。Aへの言葉ならたくさん、本当にたくさん出てきそうだ。後でユタに約束の言葉を聞いて、一体何の約束をしたんだと一緒にいたドヨンに怒られたけど、まだ、俺とAの秘密ということで。