ペーパームーン 3 (ページ21)

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○

「ヌナは行かないの？」

「ヌナはね、ここが好きなの」

「ヌナは、僕と…」

「ん？」

「僕と遊んでくれないの…？」

ユタが面白がってサングラスを取って、わざと目を潤ませたヘチャンとAが目を合わせる。ヘチャンはきっとこうすればAが来てくれるとわかっているし、Aだって可愛い弟の頼みを断れるほど逞しくはない。周りを見渡して、持っていたコーヒーはユタの手に渡された。

『ヘチャナ、マークは？』

「マクヒョンとヌナと遊ぶ」

「…ほんとに、ほんとに足の先だけね」

「ヌナ大好き！」

「うん、ヘチャニ、待って、そんな急がないで、」

猛ダッシュで駆けてきたと思ったら、ヘチャンはまた猛ダッシュで戻ろうとするから、手を握られたAの足がもつれそうになる。なんとか追いついて海の入り口に足を入れたAが、わあ、と言う顔をして、その横でヘチャンがバシャバシャとはしゃぐから、Aにもめちゃくちゃ水がかかったけれど。

『A…』

「あそこに行くってことはそういうことだって」

『俺もう後ろ向けないよ』

「ヌナたち慌てて違う上着取りに行きそう」

バレないように少しずつ振り返れば、ヌナたちが慌てて日焼け止めと上着を準備してAを待っている。いつ見ても縛りや制約が尽きない俺たちの妹を、そろそろ助けに行った方がいいんだろうか。遠くのほうで、ご飯を持ってニコニコしているドヨンを見つけた。

『そういえば俺もさっき思い出したんだけど、』

「なに？」

『皆Aが泳げないって覚えてる？』

「えっ？」

『…えっ？』

俺たちが顔を見合わせたのと同時にドヨンが帰ってきて、すごく待ったであろう大切なご飯を落としかけた。ご飯を俺たちに預けて走り出すドヨンを見ながら、ご飯を一口食べたら怒られるかな。ユタがフォークをくれたから、さっき宙を舞いかけた海老をひとつ口に放り込んだ。