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この子は、Aは、人と深く接することが苦手なまま、ここまで生きてきてしまった。結局のところ、他の人に対して、自分という存在を受け入れてもらいたくないのだと思う。受け入れられて、裏切られるのが怖いから。だからこそ上の人たちは、Aをここに入れ組んだ。狡いと思う。だってAは、生きにくかった世界から、もっと生き辛い世界に飛び込んでしまった。
『怖くなっちゃった？皆といるのが』
「…わたしは、ここにいたくないのかな」
『それは、A以外に決められる人はいないよ』
「こんにちは」と、初めて会った時から1週間ぶりに、小さな女の子から渡されたチョコレートのことを思い出していた。ドヨンの指を握って、後ろに引っ付いたまま練習室に入ってくるAを見て、叔母さんに連れられてこの会社に来たと言って、多くの時間を僕らといる時間で占めて、僕らは、同じグループとしてデビューをした。それでもAには、どこかでずっと思っていたのかな。ここにいる自分は、本当にここにいたいと思っているのかと。
『Aは、きっと女の子とデビューしても、1番人気があっただろうね』
「そんなわけないじゃないですか」
『Aが小さい時から見てる僕のことくらい信じてよ』
「……オッパは、わたしのお父さんだもんね」
『うん、ドヨンイがお母さん』
「そうだね」
『だからさ、A』
「ん？」
『僕たちだけでも良いから、言いたいことはちゃんと言うんだよ』
こっそりとドヨンに連絡を入れた。もう今日になってしまったけれど、この子がしっかりとステージを踏めるように、こっちまで聞こえるくらいにガチャガチャとドアを開けるドヨンに託さなくちゃいけない。あの時みたいになるかもしれないけれど、それでもAには、あの時よりもずっと、信じられる人間が増えたはずだから。
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
