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宿舎のおばさんが作ってくれていたスープと、嫌々薬を飲んでから、ポケットのお菓子をあげる。青白かった顔が、少しだけマシになった。
「A、ドヨンイには連絡するね」
「うん」
「ここにいるって言うだけだから」
『今日早かったんでしょ？とりあえず寝な』
少し借りますと言って、Aがまた寝転がる。テンはそばに居てあげてとクンは部屋から出て行くけれど、さっきから僕とAの携帯がずっと鳴り続けているのは、少し放っておいても良いんだろうか。多分ドヨンだし。
『ドヨンア、クンから連絡行かなかった？』
「…テンヒョン？」
『あれ、ジェミナ？』
鳴り止まないAの電話に画面を見ずに出たら、ジェミンがあれ、ともう一度声を出す。Aは寝てると言えば、そうだったんだと返ってきた。
『何か緊急だった？』
「ううん、さっき会社で見たとき、元気なさそうだったから」
大丈夫かなってと話すジェミンの後ろから、弟たちの声が聞こえてくる。やっと眠りについた子を起こすのは流石に出来なかったから、起きたら電話させると言って電話は切って、しばらくAを見ながら、ドアが開く音に振り向いた。
「寝た？」
『やっと寝た』
「ドヨンイに連絡したよ」
『うん、ありがとう』
クンが寝ているAの頭を撫でながら、寝てる顔は昔と一緒だねと言って、さっき剥いでいた毛布をかけ直す。何の夢を見ているのかは知らないけれど、相変わらず静かに眠るから、側から離れられなくなっていた。本当の親じゃないけど、子離れなんて出来る気がしない。この子は、特に。
「A、ステージやるんだっけ」
『うん、1人で』
「1人でってとこが嫌だね」
『…さっき、ジェミニから電話があったんだけど』
「ジェミニから？」
『Aはさ、もっと周りを頼って良いんだよ』
僕たちだけじゃなくてという言葉に、クンが静かに頷く。Aが綺麗に、何重にも重ねて隠しているたくさんの秘密と本音は、もうA1人では抱えきれないことを、僕もAも分かっている。それでもにっこりと笑って、昔よりも上手くなった笑顔で、何でもないと言われたら、僕たちは、もう何も出来ないのに。
『A、起きてるでしょ』
「…あはは」
「もう、寝なって言ったのに」
『後でジェミナに電話しなね、さっきかかってきてたから』
「うん」
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
