�� ページ8
○
Aがいないと探しに来てくれた女の子達に話をしたら、何があってもAの味方だと言ってくれて、マークはわたしが来たことが嬉しくて、欠伸では誤魔化せないくらい、気付けば頬が濡れていた。
「A、大丈夫？」
「A！？」
「ヒョン！Aが、」
『大丈夫です。大丈夫』
「ほんとに？何か言われたりしてない？」
『オッパ、一緒に行きましょう』
初めてオッパと呼んだら今度はテヨンさんが泣いて、マークが慌ててわたし達を抱きしめた。嬉しい…と泣くテヨンさんに笑っていたらテンオッパに見つかって、引き摺られるように練習室に雪崩れ込む。
「ヌナ大丈夫？」
『ジェノごめんね。大丈夫だよ』
「後の2人は大丈夫じゃなさそうだけど」
『どうしよう、テヨンさんのこと泣かせちゃった』
「それは大変だね」
ジェノがくれたタオルで涙を拭いて、わたしの新しいタオルをテヨンさんに渡す。おろおろしているマークの手を握って、しっかりと目を合わせた。
『マーク、びっくりさせてごめんね』
「ううん、大丈夫」
「A何か言われたの？」
『…もう忘れちゃった』
「A、」
『え、そんな怖い顔しなくても良いじゃないですか…』
「Aって結構顔に出るよね」
『ええ、』
「Aが思ってるより俺達はAのこと見てるからね」
隠したはずの紙はいつの間にかドヨンオッパの手にあって、少しだけ内容を見たオッパが眉間に皺を作って、テンオッパがわたしの顔を見る。この人達はわたし以上にわたしのことを知っているななんて呑気に考えていたら、知らない間に視界が真っ暗になる。 白いTシャツの英字が、近くに見えた。
『…ヘチャナ、どうしたの？』
「ヌナにくっついてないなって思って」
「だからって今来なくても…」
「ヌナは、ここに来て後悔してない？」
『ん？』
「僕はすごく嬉しいんだけど、ヌナはまだ何にも言ってないから」
テヨンさんが少しだけ顔を上げて、マークに握られた右手に力がこもる。ヘチャンの髪を撫でたら、腰に回された手が、すこしだけ強くなった。
『わたしはここに来て、何も後悔してないよ』
「ほんとに？」
『うん。安心した？』
「ヌナがそう言ってくれて良かった」
ヘチャンが笑って、オッパ達の顔も少しだけ緩んだ気がする。後悔する程ここにいるわけでも、何も考えていないわけでもないけれど、わたしはまだ、ひとりじゃないと知れたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1010人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
