やわらかいブルー ページ7
○
こっちに来てから少し時間が経った。女の子達はちゃんと食べているかとか辛いことはないかと聞いて、わたしはそれに大丈夫と返すのが、ルーティンのようになっていた。
あれからまた偉そうなおじさんの部屋に行って、Aならそう言ってくれると思ったとかなんとか言われながら部屋を出る。終わったら戻ってきてと言われたことを思い出しながら歩いていれば、エレベーターの前でマークが小さく手を振っている。
『マーク、迎えに来てくれたの？』
「さっき話せなかったから」
『マークは知らない間に大人になっちゃったのかと思った』
「それテヨンイヒョンにも言われたよ」
『テヨンさんとわたしって似てるのかな』
「うーん、AはAだね」
エレベーターのボタンを押して、段々と降りていく数字を見つめる。Aと一緒に過ごせるの嬉しいなというマークの言葉は、何のつっかえもなくわたしに届く。盗み見た横顔は、初めて会った時よりも、やっぱり大人になっていた。
聞き流した説明をまた受けながら、誰でも良いからここに連れてくればよかったと、 話を聞いているフリをしながら頭の中で考えていた。わたしより上の人達は考えていることがバレてしまいそうだし、可愛い弟達にこれを聞かせるのは申し訳なくて、やっぱり1人で良かったなと思いながら、渡された資料の中で、自分の名前を指で隠した。
『マークと一緒なの、びっくりだね』
「俺は少しだけ、Aが良いなって思ってた」
『なあにマーク、そんなこと言ってくれるの？』
「だからAがあの部屋に来たとき、すごく嬉しかったんだよ」
練習室がある階でエレベーターは停まって、マークはそのまま歩き出すけれど、わたしだけ何故か動けなかった。A？と言いながら手を引っ張ってくれてなんとか箱から出て、握られたままの手に力を入れる。下を向いたまま、マークを見ることが出来なかった。
あの場所に、マークがいてくれたら。昨日までの自分とは違う、新しい荷物をたくさん背負って生きていくわたしの隣に、マークがいてくれたら、わたしはもう少し、柔らかく笑えたんだろうか。
「A？どうしたの？具合悪い？」
『マーク、わたし、』
「うん？」
『少しだけ自惚れても良いかな』
「うん、いいよ」
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
