�� ページ4
○TEN
広い広い練習室の真ん中に、円を描くように僕達は座っている。みんなが視線を寄せるAは僕とドヨンの腕を掴んだまま何も話さなくて、さっきからドヨンが水を飲むかとか、何か食べるかとか必要以上に世話を焼いている。
僕たちの腕を離さない可愛い可愛いAは、それに全部首を振った。
「じゃあ、えっと、何をすればいいのかな」
『Aはみんなのこと知ってると思うよ』
「え、そうなの？」
『Aは記憶力良いもんね』
「…顔と名前くらいは知ってます」
少しだけ顔を上げたAが、テンオッパとドヨンオッパと言いながら僕たちと目を合わせて、可愛い弟達に手を振った。小さな弟達は目を輝かせながらAを見て、100倍の力で手を振り返す。
『じゃあAについて知ってもらう？僕なんでも知ってるけど』
「なんでお前が言うんだよ」
『ドヨンは黙ってて』
「えっと、A、大丈夫？」
「あ、大丈夫です…」
『A、お腹空いたの？』
「え？」
『そんな顔してたから』
「…わたしじゃなくてジェノが、」
『ジェノ？ジェノお腹空いた？』
「え、あ、ちょっとだけ」
「ジェノおいで。チョコあげるね」
さっきドヨンに無理やり握らされたチョコレートはそのままジェノの口の中に消えて、Aにあげたんだけど…？と言いながら、ドヨンはジェノに残りのチョコレートを渡していた。僕にもくれたら良かったのに。
「…Aです」
『A、』
「テヨンさんとオッパに連れられて来てからあんまり実感とか湧いてなくて、今も何もわからないんですけど、」
『A、ゆっくりでいいよ』
僕とドヨンの腕を離したAは、ひとりひとりと目を合わせて、最後にテヨンイヒョンと目を合わせた。
さっきからずっとヒョンは泣く寸前みたいな顔をしていたけれど、テヨンさんと呼ばれて一気に真面目な顔をするんだから、僕は少しだけ笑ってしまった。
「ここで、一緒にやりたいです」
「もちろん、よろしくね」
「よろしくお願いします」
ぺこっとお辞儀をしたAは、さっきまでとは全然違う顔をして、にっこりと笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1010人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
