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わたしたちってここから逃げられないからと、Aが困ったように笑う。俺はそれを見ながら、目の前にいる女の子のことを何も知らないのだと考えてしまう。ドヨンやテンは、俺よりもたくさんのことを知りながら、Aと一緒にいるんだろうか。
「これはユタオッパだけの秘密ね」
『待って俺もう割とキャパオーバーなんだけど？』
「実はね、日本語も少しだけ喋れるんだよ」
ここでは近くに話す人がいないと聞くことのない言語が、Aの口から俺の耳に届く。俺よりも年下の小さな女の子は、一体どれだけの物を背負いながら、ここまで生きてきたんだろう。
『それも覚えないといけなかった？』
「でもたくさん言葉を話せたら、友達が出来ました」
『その人たちとは今も連絡取ってたりする？』
「今のわたしはあの頃とは違うので、気付かれるにはもう少し有名にならないと」
A起きたの？と、後ろでドヨンの声がした。オッパおはようとAが言って、ドヨンが見たことないくらい優しい顔をして笑っている。Aが周りの人たちを愛しているように、たくさんの人がAのことを愛している。それは確かなことなのに、どうしてもこの子には、悲しい言葉が付き纏う。
「ヒョンと何話してたの？」
「内緒の話。ね、ユタオッパ」
『うん。俺たちの秘密の話な』
「何？俺には聞かせてくれないの？」
「オッパが知るのはいつになるかなあ」
「そんなこと言ってるとお菓子あげないよ」
「ユタオッパ、絶対言っちゃダメだよ」
ご飯ありがとうございました！とAがソファーから飛び降りて、自分の部屋に戻って行く。ヒョン、何言われたの？とドヨンがAのいた場所に座って心配そうな顔をするから、まるで本当にAの親みたいだなと思う。俺はAを愛しているお兄さんだから、親と話をするのは許してくれるだろうか。
『Aに秘密って言われて俺が言うと思う？』
「ヒョンを信じてない訳じゃないよ。でも、」
『大丈夫。ドヨンイがそんなに心配することじゃなかったから』
「本当に？」
『Aは俺たちが大切にしていこう。な？』
Aにとっては頼れるお兄さんでも、俺からすれば可愛い弟が、Aと一緒に背負うのなら、それを後ろから少し支えることくらいはしたって何も言われないだろう。夜出前とるけど何が良い？と携帯を見せれば、Aにも食べさせないとと言うのだから、俺は思わず笑ってしまった。
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
