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○
「…ヒョン？着きましたよ」
『あ、うん』
2人でご飯を食べにおいでと車の中でチソンに教えてもらったことだけは覚えているけれど、ヌナ？うん。わかりました。とチソンが電話を終えて、2人でエレベーターに乗り込んでも、部屋まで歩くにしても、僕はチソンに置いていかれないように必死に歩くだけで、なんだかこれじゃ、チソンの方がヒョンみたいだ。
「ちゃんと来れてよかった」
「ヒョンが喜んでましたよ」
「オッパ可愛いでしょう？これ後であげておいてくれる？」
「ヌナが作ったの？」
「この前作ったんだけど、2人にもあげるね」
チソンとAヌナが話をしながら、そこに座っててねと椅子まで案内されるまで、僕の心臓は大きく鳴りっぱなしだ。ヘチャンはいつもくっついて甘えているけど、今はその図々しさを少し分けてほしい。手渡されたマドレーヌに付けられたロンジュンと書かれたネームタグを、バレないように指でなぞった。
「さっきは会社にいたの？」
「今日練習が午後からって知らなくて」
「ロンジュニも？」
『…え、あっはい』
「でも間違えてくれてこっちは助かったかも」
どうぞと2人分お皿を運んできたAヌナが、僕とチソンの前にそれを置く。お店で出てくるみたいに綺麗に盛り付けられたトマトパスタを見つめていたら、チソンのいただきますという声が聞こえて、慌ててそれに続いた。
「2人の口に合ったら良いんだけど、」
「ヌナ、すごく美味しいです」
「良かった。まだたくさんあるからね」
たくさん作りすぎちゃってとキッチンでにこにこ笑うAヌナに、少しの勇気を出して美味しいですと口に出してみる。少しだけ体の熱が上がったことに、チソンがこのまま気付かないでくれたら嬉しいんだけど。
「ロンジュニは、」
『…え、僕？』
「うん、可愛いね」
分かってる。Aヌナは弟たちが大好きで、ちょっとだけ愛情表現がオーバーなことも、ヘチャンたちがたくさん可愛がられていることも、それを少し離れたところで見ながら、少し、ほんの少しだけ、羨ましいなと思っていたことも。
ガチャンと何かが落ちた音が聞こえた。Aヌナの言葉に動揺して自分のフォークを落として、これしか持ってきていない練習着に赤いシミを作ったことに、Aヌナがこっちに来て、大丈夫だった？と頬に手が触れるまで、僕はそのまま、ずっと固まったままだった。
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
