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最初にドヨンに手を引かれて練習室に入ってきたAはまだあどけない子供で、それなのに笑うのが下手くそだった。
偉い人たちは昔からAのことを気にかけていたけれど、最初からAを女の子たちのグループでデビューさせる気なんてなかったんじゃないか。僕たちにあまりにも馴染んだAを見て、俺たちが世話をしたばかりに、Aの可能性を狭めたんじゃないかと、つい3日前に考えてどうにもならなかったことが、また頭の中を支配する。
『ねえA？なにがAをそうさせたの？』
「テン、ちょっと、」
『何を見た？何を聞いた？僕にも話せないこと？』
「…ごめんなさい」
ドヨンはさっきから腕を組んでAを見つめたまま、大方僕と同じことを考えているんだろう。普段あれだけAについての神経を張り巡らせているドヨンでさえも、弱ったAについては対処法を知らないらしい。でも僕だって、何が正しいのかなんてわからないままだ。
『A、何も知らない人たちが怖い？』
「…オッパは怖くないの？」
『僕はね、Aがそれで壊れることの方が怖いよ』
ついにAの目から涙が落ちて、僕と反対側に座っていたジェヒョンが目を見開いた。
Aは笑うのが下手だったけど、泣くのも人一倍上手くなかった。下唇を力一杯噛んで我慢したその涙は、一体どこに流れていくんだろう。固まって動かないんじゃないかと思っていたドヨンがティッシュを持ってAに近付けば、Aの意識が急に戻ったように涙を拭おうとして、今の状態を把握して、また下唇をぎゅっと噛んだ。
「大丈夫です」
『何が？何にも大丈夫じゃないんだけど？』
「もう大丈夫。ごめんなさい」
「A、本当に？大丈夫なの？」
「マークごめんね。わたしが飲みたいって言ったのに」
普段のように戻ったAが、メイク直してもらわないといけないねと言って立ち上がって、ありがとうとマークから受け取ったそれを持って、もう一度頭を下げた。メイクヌナがおいでと声をかけて、この場所に、僕たちだけが残される。
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
