�� ページ15
○
「あれオッパもう来たの…ヘチャン？どうしたの？」
『あ、えっと、』
「Aがテイルヒョンと密会してるって」
『ヒョン！』
ドアが閉まる前になんとか体を滑り込ませたら、なんだかいつものヌナとは違う匂いが部屋を包んでいる。パタパタとスリッパを鳴らして、動けない僕の頬をぎゅっと包む。思い出した。これはクッキーの匂いだ。
『ヌナ、お菓子作ってるの？』
「食べる？いまちょうど焼けたところ」
『…うん！』
そういえば、ヌナの部屋に入るのは初めてだった。おいでと手を引かれてリビングに入れば、間取りは同じはずなのに、なんだか随分広く見える。座っててねと案内されたソファーから動けないでいれば、隣にテイルヒョンが座った。
「密会に入ってきた気分はどう？」
『みんなで僕を揶揄うんだ…』
「これAから。1番に食べるのはヘチャニだよ」
キッチンを見たらエプロンを着けたヌナがドヨンイヒョンと話していて、何も考えないまま近付いて、ヌナの手を取ってソファーまで戻りながら、テイルヒョンと僕の間にヌナが座った。俺いまAと喋ってたんだけど！という声には、聞こえないフリをして。
「あ、クッキー貰った？マーク達にも配らないとね」
『みんなの分も作ったの？』
「クッキーって無限に焼けちゃうんだよね…」
『でも、』
「ん？」
『最初に食べるのは僕？』
「うん。ヘチャニが最初」
僕も僕で弟の仕草が上手いと思っているけれど、このヌナも、姉の仕草が上手いのだ。ほんの小さな特別で心が躍るくらい嬉しいんだから、あと数日はこの幸せのまま生きていけそうだ。美味しいとヌナに言ったら、たくさん食べてねと手に乗せてくれる。マクヒョンの分まで食べたら、流石に怒られちゃうかな。
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
